今年に入り、パチンコ店の閉店が急増している。パチンコ店向けの物件サイト「パチンコ物件ドットコム」によると、1月1日から10月19日までの閉店数は723店舗。同サイトの過去2年間の総閉店数をみると2020年が667店舗、2021年が660店舗となっているので、今年は過去2年を大幅に上回るペースとなっている。

 パチンコの聖地ともいわれる東京都台東区上野でもパチンコ店の閉店が相次いでおり、特に30年以上にわたり営業を続けてきた「サイバースパーク上野店」「上野ダイヤモンド」が8月末をもって閉店したことは多くのパチンコファンに衝撃をもたらした。老舗店も閉店せざるを得ない状況となっており、業界全体が縮小傾向にあるのかもしれない。

 ネット上でもパチンコ店が大量に閉店していることを受け、「改めて事の重大さに気づいた」と嘆く声も少なくなかった。一方で「コロナ禍で店舗内での感染対策が強化され、マスク着用を義務付けられ、息苦しい」「そもそも遊技人口がかなり減った」などコロナ禍、近年のパチンコ業界で掲げられていた問題により店舗を減らしたという意見も。

 そこで今回は、『パチンコ利権 – 瀕死の業界に未来はあるのか? – 』(ワニブックス)の著者で制度アナリストの宇佐美典也氏にパチンコ店大量閉店の背景について聞いた。

もともと縮小傾向…コロナ禍が致命傷となったお店も

 2022年に入ってパチンコ店の閉店数が加速したのは、やはりコロナ禍の影響が大きいという。

「コロナ禍へと突入してから2年半以上経過しましたが、パチンコ店の売上はコロナ禍以前の水準に回復しておりません。外出規制が厳しかった2020年のコロナ禍当初から固定客の需要を頼りになんとか営業してきた店は多かったものの、現在に至るまでに売上の回復が見込めず、閉店の決断を下したところが多かったのでしょう」(宇佐美氏)

 コロナ禍の苦境を必死に耐え忍んできたものの、今年限界を迎えた店舗が多いということか。続けて宇佐美氏は、ほかのギャンブルにパチンコ人口が流動したこともパチンコ衰退の原因のひとつであると語る。

「一番の流動先は競馬、競輪、ボートレースなどの公営ギャンブルです。私はギャンブル依存症の団体と連携しているのですが、コロナ禍ではこうした公営ギャンブルの相談件数が大幅に増えているようです。公営ギャンブルは近年ネット戦略に力を入れており、スマホで手軽に馬券や車券を購入してレースも見られるようになったので、より手軽にギャンブルを楽しめるようになり一気に人口が増加しました。そのため、近所の店舗に足を運ぶ必要があるギャンブルのパチンコは、スマホ普及の現在では気軽さという点で後れを取っている感が否めません。

 あとこれはコロナ以前からですが、スマホのソシャゲ台頭もパチンコ衰退の一因となっています。ソシャゲでは、好きなキャラを当てるためのガチャ演出がギャンブルに近いと言われており、射幸性(偶然による利益、成功をあてにすること)を求める若者がパチンコからシフトしています。

 1995年の最盛期には約2900万人もいたパチンコ、パチスロ人口は減り続けており、業界側も客不足をカバーしきれていません。また現在の客層は40代以上が中心となっていて、そうした世代向けの遊技機が開発されるので、結果としてますます若者が来店しなくなりパチンコ人口減少が止まらなくなっています。ただ、若者は必ずしもギャンブル離れをしているわけではなくて、先ほどお伝えしたように手軽にできる公営ギャンブルや、あとはFXや仮想通貨などに流れているのだと思いますね」(同)

業界の巻き返しは厳しいものの、生き残る道はある?

 人気があった有名店や老舗店でも閉店を余儀なくされるという現在のパチンコ業界だが、都市部と郊外とでは閉店スピードが異なるそうだ。

「都市部ではそもそものパチンコ人口が減っていることに加え、パチンコ以外の娯楽施設が多いことから大半の店舗の閉店は避けられないはず。対して、地方の郊外では都市部よりも娯楽施設が少なく、かつ駐車場が整備されており自動車で来やすいので、生き残りやすい傾向にあります」(同)

 また風営法施行規則によって2018年10月から開始したパチスロ5号機から6号機への移行もパチスロ離れの要因のひとつになったという。

「6号機はかなり射幸性の低い機種になっているので、高い射幸性を求める利用者の支持を得られておらず、パチスロの人気が低迷しています。2016年ごろ、まだ5号機の時代にパチンコ業界が脱法的に射幸性を上げていた不正問題が数々明らかになり、他方カジノ導入の議論が活発化してギャンブル依存症対策を求める議論が高まった時期がありました。こうした世論の批判を受けて、警察庁、パチンコ業界としても“我々はギャンブル依存症対策している”というエビデンスづくりのために射幸性を大幅に下げたという経緯があります。」(同)

 そして、パチンコ台のバラエティーが乏しくなってきたことも、パチンコ人口の減少のきっかけになったと宇佐美氏。

「現在は、確率変動(大当たり率をアップさせ、次回に出る大当たりを容易に出せる状態のこと)タイプのパチンコ台がほとんどとなってしまい、パチンコの遊びにバラエティーがなくなり、お客が離れていきました。確変機の数を減らそうにも、そもそもパチンコ業界はその確変機の台頭によって売上が伸びた業界だったので、そう簡単に縮小させられるわけでもないのです」(同)

 業界の構造的な問題やライバルの公営ギャンブルの存在、そしてコロナ禍の世相を顧みると、パチンコ業界の巻き返しは厳しいのかもしれない。

「産業規模としてはある程度縮小せざるを得ませんね。多くの中小のパチンコ店は廃業せざるを得ず、やがて大手に集約されていくでしょう。しかし、そのうえでどのように親和性の高い業態に転換していくのかが中小店の課題ではないかと私は考えています。たとえば、昔に登場した古いパチンコ、パチスロ台を集めたレトロなテーマパークのようなゲームセンターを作れば、当時の機種に懐かしさを覚える往年のパチンコ客が集まってくるはずですし、実際そうした成功例がちらほら現れています。従来のパチンコビジネスの枠にとらわれず、業界、中小店には生き残る道を見つけてほしいですね」(同)

 遊技人口が減っているとしても、パチンコ、パチスロそのものへの愛は思い出と共に根強く存在すると考えられる。業界が再び息を吹き返せるのか、今後も注目していきたい。

(取材・文=文月/A4studio)