たばこ代、20年間で365万円支出…肺がんや要介護の危険増大、早急な禁煙が賢明

たばこ代、20年間で365万円支出…肺がんや要介護の危険増大、早急な禁煙が賢明

 先日、古いテレビドラマを観ていたら、女優さんがたばこを吸うシーンが出てきて、ああ、こんな時代もあったなあと懐かしく感じた。

 不良少年役がたばこをふかして悪ぶってみたり、刑事役が犯人張り込み時間の長さをたばこの吸い殻の量で示したり。かつては、映画やドラマなどで、たばこが小道具として使われていたものだ。

 たばこは、コーヒー、お茶、お酒と並ぶ世界の四大嗜好品の一つともいわれ、いわば大人の嗜み。しかし、喫煙によるさまざまなリスクが顕在化するにつれ、今やたばこは文字通り“煙たい”存在となってしまったようだ。

 どんなに値上がりしようと、声高にリスクがあると言われようと、「絶対に自分はたばこをやめない!」と確固たる信念を持っている人には、何も言うまい。しかし、なかには、禁煙したいが、つい習慣でやめられないという人もいるはず。そんな方々が、早くやめておけば良かったと後悔しないよう、最近の喫煙者を取り巻く環境の変化と喫煙による5つの経済的なデメリットをご紹介したい。

●どんどん狭くなる「喫煙者の肩身」と「喫煙可能な場所」

 まずは、環境の変化から。

 2018年7月に受動喫煙対策を強化した「改正健康増進法」が成立し、2020年4月から全面施行となることをご存じだろうか? これによって、学校、病院、児童福祉施設、行政機関、バス、航空機等について、屋内は禁煙かつ敷地内も基本的に禁煙。敷地内の屋外は、受動喫煙を防止するための対策がとられた場所にのみ喫煙場所を設置できるという。

 これらの場所以外も、多くの人が利用する施設や飲食店等は、原則として、喫煙ブースを設置する全席禁煙あるいは店内で一切喫煙できない全面禁煙かを選択しなければならない。

 さらに、2018年7月に制定された「東京都受動喫煙防止条例」は、東京2020大会に向けて、国の法律よりも要件が厳格化されている。

 原則として、従業員のいる飲食店は屋内禁煙で、喫煙に対応するには専用の場所を設ける必要がある。

 そのため、規制対象となる飲食店は、国の法律を基準にすると全国の45%だが、都条例では都内の84%にものぼる。もはや、ほとんどの飲食店の店内が禁煙になると考えて良いだろう。

 全面施行が来年4月とはいえ、すでに、ファストフードでは、日本マクドナルドや日本ケンタッキー・フライド・チキンが全面禁煙を実施。モスフードサービスも2020年3月末までに全面禁煙化を目指す。

 飲食チェーンでは、2018年6月から串カツ田中がほぼ全店舗、同年7月からサイゼリアが段階的に全面禁煙化を進めているほか、すかいらーくホールディングスやココスなども、全面禁煙化を発表しているなど、動きは早かった。

 一方で、愛煙家の客が多い居酒屋や専用コーナーを設置する余裕のない中小規模の喫茶店等は対応に苦慮している。喫煙者にとっては、「まだ吸っているの?」と周囲に言われて肩身が狭くなるばかりか、一服できる場所も失われつつあるということだろう。

●成人喫煙率(男性)は約30年前に比べると55.3%から29.4%に減少

 それでも以前に比べて、たばこを吸う人はかなり少なくなった気がする。実際の喫煙率はどの程度なのだろうか?

 厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査」によると、平成元年のデータでは、習慣的に喫煙している人の割合は男性55.3%、女性9.4%で、とくに20〜30代男性の6割以上が習慣的に喫煙していた。それが、平成29年のデータでは、喫煙者の割合は平均17.7%と2割にも満たない。

 男女別にみると、男性29.4%、女性7.2%で、とりわけ30〜40代男性が、他の年代よりも割合が高く、4割近くが現在も習慣的に喫煙している。つまり、この30年ほどの間に、男性の喫煙率が明らかに減少したわけだ。

 さらに遡ると、JT全国たばこ喫煙者率調査では、昭和41年以降のピーク時(昭和41年)が83.7%だったというから、今年50歳になる筆者が生まれた頃と比べると、かつて多数を占めていた喫煙派がマイナーになり、今やたばこを吸わない禁煙派がメジャーになったということになる。

 また、現在喫煙している人の中でも、3割近くの人が、たばこをやめたいと考えている。男女別にみると、男性26.1%、女性39.0%と、女性のほうが禁煙について、より切実なようだ。

●たばこによる経済的損失は2兆円以上

 それでは、喫煙による経済的損失はどれくらいなのだろうか?

 国全体の損失に関する検証データはさまざまなものがあるようだが、比較的、最近のわかりやすいデータをご紹介しよう。

 厚生労働省研究班の推計によると、2015年度の総損失額は、2兆500億円。その内訳は、喫煙者の医療費、受動喫煙、歯の治療費などの医療費が1兆6,900億円と8割以上を占める。そして、こうした病気にともなって必要となる介護費用や火災による消防費用、吸い殻の清掃費用など医療費以外の費用が3,600億円となっている。

 2兆円の損失と言われても、単位が大きくて実感がわかないかもしれないが、2019年10月に実施される予定の消費税増税の経済対策が約2兆円に膨らむ見込みだという。となれば、中長期的にみても、社会全体に与える影響は見過ごせないレベルなのだとは感じられる。

 ちなみに、一般的に、たばことの因果関係が「十分ある」もしくは「示唆される」といわれる病気といえば、がんや脳卒中、心筋梗塞、認知症など。脳卒中や認知症は、要介護状態の原因にも挙げられているように、たばこによる経済的損失は、直接的な医療費ばかりではなく、将来の介護費用にまで及ぶという点にもっと注意すべきである。

 とりわけ、依然として約4割が喫煙者である40〜50代男性にとって、将来、要介護状態になりたくないのであれば、今の時点で禁煙する必要がある。狭心症や心筋梗塞などの心疾患のリスクが低下するのは、禁煙から2〜4年経過してから。がんのリスクが低下するのは、10年かかるからである。

●たばこによる個人レベルの5つの経済的デメリット

 それでは、経済的損失について、もう少し具体的かつ身近な問題として考えてみよう。たばこが個人の家計に与える影響として、主に次の5つが挙げられる。

(1)たばこ代がかかる
(2)勤務先の各種手当(禁煙手当など)がもらえない
(3)医療・介護費がかかる可能性が高い
(4)住まいにかかる費用負担が大きい
(5)民間保険の保険料が高い(健康体割引が利用できない)

 それぞれの内容を詳しくみてみよう。

(1)たばこ代がかかる

 2018年10月のたばこ税増税を受けて、たばこは値上がりしている。銘柄によってたばこの値段は変わるが、セブンスター・ピース1箱500円のたばこを1日1箱、毎日吸う場合、500円×365日=18万2,500円かかる。月額に換算すると、約1万5,200円となり、ちょっとした支出ではないか。さらに、喫煙歴が20歳から20年間だとすると、365万円にものぼる。

 たばこの危険度をはかる「ブリンクマン指数」という指標をご存じだろうか? 1日のタバコの本数×喫煙年数で計算し、この数値が高いほど危険度が増す。例えば、400を超えると肺がんを発症する危険性が高まるといわれるが、同指数200以上の人なら、禁煙治療が健康保険の適用になるので、これ以上、たばこにお金をかけて健康を害するのなら、禁煙治療外来に行って治療を始めることをお勧めしたい。

 加えて申し上げると、たばこの値上がりはこれからも続く。2019年10月には消費税が10%に、2020年10月と2021年10月には、さらに1本当たり1円ずつ増税の予定となっている。

(2)勤務先の各種手当(禁煙手当など)がもらえない

 ここ数年、「健康経営」という考え方が提唱されているように、従業員の健康維持・管理、業務効率化を目的として、コストをかける企業が増えている。

「禁煙手当」あるいは「健康維持促進手当」など、名称はさまざまだが、福利厚生の一環として、禁煙を実行した喫煙者や禁煙を継続している非喫煙者を対象に、月額5,000〜1万円の手当を支給するというものだ。

 ルールは各社異なり、ある会社では、禁煙する旨の誓約書を社員が会社に提出し、喫煙した場合あるいは不当に手当を受け取った場合は、手当が取り消されたり、全額返金もやむなしといった措置があるという。いずれにせよ、支給額が1万円なら年間12万円。こちらもちょっとした金額である。

 数年前から禁煙手当を導入している企業の社員によると、「禁煙へのモチベーションがアップしますし、健康への意識が高まって、ほぼ全社員が禁煙できました」とのことである。

 前編はここまで。後編では、経済的デメリットの(3)〜(5)をご紹介しよう。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)


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