(ブルームバーグ): トヨタ自動車や日産自動車など国内自動車メーカー7社が今週、今期(2022年3月期)の決算を発表する。世界的な半導体不足などサプライチェーン(部品供給網)の混乱に伴う生産への影響が注目される。

  12日に決算発表するトヨタは2月時点では、事業継続計画(BCP)の一環で在庫を積み増していたことなどから、半導体不足による影響は限定的との見方を示していた。その後、石油化学製品や半導体の不足の影響で北米とチェコでの生産調整・停止を明らかにしている。

  さらに、トヨタのカナダの工場がサプライヤーにおける問題で4月29日から停止しており、再開時期は未定だと、広報担当の山田詩乃氏が10日明らかにした。

  新型コロナウイルス感染拡大の影響で自動車生産や販売が落ち込み、今期は四半期累計で赤字に陥る競合他社も多い中、トヨタはお家芸のコスト削減などで黒字を確保して底力を見せた。2月には前期で2度目となる業績見通しの上方修正を発表した。

トヨタ、今期業績予想再び上方修正−コロナや半導体不足跳ねのけ (3)

  ブルームバーグが集計したアナリスト18人による今期営業利益の予想平均値はコロナ禍前の水準も上回る約2兆6755億円となっており、半導体不足や新型コロナ感染再拡大への懸念がある中でも同社に対する市場の期待が高いことがうかがえる。

  自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、「サプライチェーンをしっかり整備してきたことが奏功し、結果的にトヨタ一人勝ちの結果になってしまっている」と指摘。その上で、在庫の積み増しには限りがあることや大手半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスの主力工場の火災を踏まえると、トヨタであっても「4−6月期は減産を強いられる可能性が高い」と語った。

  半導体不足や米国を襲った記録的な寒波などによるサプライチェーンの混乱で、米ゼネラル・モーターズやフォード・モーターなども減産に追い込まれるなど自動車業界で幅広い影響が出ている。調査会社IHSマークイットの試算によると、1−3月期に世界で約130万台の生産に影響が出た。

回復には時間

  ホンダが2月の決算発表時に半導体不足の影響は今期には発生しないとの見通しを示すなど状況の改善に向けて楽観的な見方もあったが、ルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月に火災が発生したことで目算に狂いが生じる可能性も出ている。

  那珂工場は翌月に再開したものの、出荷量が以前の水準まで回復するには時間を要すると見込まれている。

  ホンダは10日、半導体不足を含めた複合的な要因で、タイ・アユタヤの四輪工場を4日から月末まで停止する予定であることを明らかにした。同社は先月28日にも、同様の理由で寄居工場(埼玉県寄居町)など国内3工場の操業を5月中旬以降に最大6日間停止すると発表していた。

  カルロス・ゴーン元会長の逮捕以降、低迷した業績立て直しに取り組む日産では半導体不足を受けて、3月に北米で生産調整を実施。4月と5月についても半導体不足を背景とした減産が報じられている。市場予想では今期の営業利益が1330億円と黒字転換を見込んでいる。

  SUBARU(スバル)は4月に日本と米国の工場で稼働を停止しており、同月の減産規模は計約2万5000台となる見通しを示している。同社によると、米国工場は3日から操業を再開し、国内工場も大型連休明けの10日に再開した。

インドで感染爆発

  三菱自動車も5月、先月に続き日本とタイで減産を実施する計画。スズキは4月に静岡県の一部工場を停止した。また、主力市場のインドではコロナ感染が爆発的に拡大しており、同社子会社のマルチ・スズキ・インディアは9日までとしていた工場の操業停止を16日まで延長することを明らかにしている。

  マツダは半導体不足の影響による2月の減産として約6000台を想定していることを明らかにしている。広報担当者によると、その後も半導体不足の影響は継続しているが、3月以降の具体的な影響台数は公表していない。ただ、半導体不足による工場の稼働停止は発生していないという。

  野村証券の桾本将隆アナリストは4月中旬のメモで、ルネサス工場の火災に伴う半導体不足の深刻化で、日系自動車メーカー7社の世界生産は今期上期(4−9月期)に135万台減少すると予想。下期(10−3月期)に減産分の約7割相当を増産で挽回可能と見込むものの、通期では全体で3000億円の営業減益要因になると試算した。

  会社別では、「半導体の在庫が相対的に多く、サプライチェーンマネジメントに優れるトヨタが4−9月期に主要市場で大幅にシェアを拡大し、好業績が続く」との見方を示した。

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