(ブルームバーグ): 自動車メーカーは半導体不足に最初に見舞われた昨年末、問題が解消されるまで工場の操業を停止しようとした。しかし、危機も5カ月目に入り、状況が悪化するにつれ、各社は生産を少なくともある程度進めようと工夫を凝らしている。

  日産自動車は半導体不足のため、通常なら搭載するナビゲーションシステムを何千台もの車両で搭載の対象外としている。イタリア・米国系フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とフランスのグループPSAの統合で誕生したステランティスのピックアップトラック「ラム1500」には、死角をモニターする「インテリジェント」バックミラーが標準装備されなくなった。仏ルノーがスポーツタイプ多目的車(SUV)「アルカナ」に大型デジタルスクリーンを搭載するのをやめたのも、半導体を節約するためだ。

  よりスマートな電気自動車(EV)へのシフトを加速させようとしている自動車業界にとって、今回の危機は過去に例を見ない試練だ。何十年もの間、自動車メーカーは先進機能の拡大・改善に着実に動いてきたが、現在は販売回復を優先させるため、少なくとも一時的に取り組みを後退させている。

  こうした状況は、業界が直面する問題の深刻さを浮き彫りにしている。ホンダとドイツのBMW、米フォード・モーターは先週、いずれも半導体不足に伴う問題が深刻化しつつあると注意喚起した。重要な部品の供給を確保できないことは短期的に大きなマイナス要因になるだけでなく、テクノロジーに精通したインターネット企業や家電メーカーとの競争が激化する中で将来的な見通しも暗くする。

  サンフォード・C・バーンスタインで半導体業界をカバーするステーシー・ラスゴン氏は「状況は恐らく改善する前にさらに悪化する」と予想。「生産能力を復活させるには長い時間がかかるだろう」との見方を示した。

  自動車メーカー側の対策の1つは、ルノーや日産のように、不足しがちな部品はより収益性が高く、より売れ行きの良いモデルに割り当てることだ。

  また、生産する車両にハイテク機能の搭載を断念した企業もある。フランスのプジョーはハッチバック「308」の速度計を、入手困難な半導体を必要とするデジタル版ではなく、旧式のアナログ版に戻した。米ゼネラル・モーターズ(GM)のピックアップトラック「シボレー・シルバラード」の一部には特定の燃料管理モジュールが搭載されていない。

  車載用半導体最大手、オランダのNXPセミコンダクターズのカート・シーバーズ最高経営責任者(CEO)は、EVへのシフトは予想以上のペースで進んでおり、それが自動車向け半導体の需要をさらに押し上げていると分析した。

  半導体受託生産を手掛ける台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音会長は、危機は終息には程遠いと警告。CBSとのインタビューで、自動車向け半導体不足は2022年初めまで続く可能性があるとの見通しを示した。

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