(ブルームバーグ):

国内暗号資産(仮想通貨)交換業大手のビットフライヤーは、海外機関投資家向け営業を強化し、収益に占める割合を現在の10%未満から2年以内に倍以上の20%まで引き上げる方針だ。国内の個人に偏っている顧客層を広げることで、収益安定化につなげる。

  3月末に就任した林邦良代表取締役(51)がブルームバーグのインタビューに答えた。シティグループ証券副社長から転身し、親会社のビットフライヤーホールディングス(HD)の代表取締役も兼ねる。特に米国やアジアの機関投資家に照準を合わせ、新規顧客の開拓と既存顧客の取引増を目指す。

  具体的には、4月に海外機関投資家向け営業を担うセールストレーデング室を新設し、元シティ証エクイティ・マーケッツ本部長の加藤崇昭氏を室長に迎えた。林氏は米国を中心とした投資家層の広がりを「見逃す手はない」とし、「アジアの時間帯で安定して流動性を提供できることや規制の厳しい日本できちんと運営できる健全性の高さなどをアピールしていく」と事業拡大に意欲を見せた。

  暗号資産は米国で急速に市民権を得つつあり、大手企業など投資家の相次ぐ参入で市場は活況を呈している。

  ビットコイン価格は4月に6万4000ドル超にまで上昇。昨年10月にモバイル決済サービスの米スクエアがビットコインへの投資を発表したことなどが価格上昇のきっかけとなったほか、政府による景気刺激策と中央銀行による金融緩和を背景に、インフレに対するヘッジ手段として注目が高まった。足元では下落しているものの、昨年10月の1万ドル近辺と比べて4倍超の水準にある。

  成長分野には人材の流入も続く。林氏は好況を背景に「今は目新しいことをしなくてもどんどん仕事が増えており、人探しは急務だ」とし、IT(情報技術)やコンプライアンス、法務などの専門人材を年内に数十人採用したい意向を示した。現在の従業員数は200人程度だという。

  ゴールドマン・サックス証券やドイツ証券での勤務経験もある林氏自身は伝統的な投資銀行業界からの転職組だ。「少し抵抗はあった」というが、「50歳を過ぎてこのまま金融しか知らなくていいのかという葛藤もあった。ブロックチェーン技術については前職の時からビジネスで活用できないか検討していたし、新興テクノロジーを扱える機会と出会ったことは運命と思った」として決断した。

  一方、日本の機関投資家開拓について林氏は、暗号資産が会計上、時価評価されるなど投資のハードルが高いとして「非常に難しい」と認める。現在の顧客は国内個人の他、海外のファミリーオフィスや一部ヘッジファンドなど。好調な市場を反映して同社の預かり資産残高は3月末時点で5732億円と3カ月でほぼ倍増した。「今年末までに桁が変わっていても驚きはない」と残高1兆円を視野に入れる。

  ビットフライヤーのトップ交代は過去2年あまりで3回目。前任の三根公博氏は在任期間1年だった。林氏は暗号資産業界は「絶対に育っていくと確信している。その時に一番重要なのは安全性」と指摘。「ビジネスが伸びている時は攻めたくなるが、事故が起こると築いた信頼も水の泡になる。コンプライアンスやリスク管理といった守りを固めることが大切で、私の経験、知見が活用できると思う」と抱負を語った。

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