(ブルームバーグ): バイデン米大統領の側近は、年内は続くと予想される物価上昇が同国経済を直ちに危険にさらすことはほとんどないと考えている、だが一方で、インフレ加速が政治的に難しい問題を突き付けつつあるとも受け止めている。

  米政権高官は最近の物価上昇について、中古車や航空旅行、ホテル宿泊など特定の項目の需要急増が原因であり、経済が新型コロナウイルス禍から回復し、消費者が自由に動き回ることに安心感を強めている現状の反映だと強調。持続的なインフレ加速との違いを指摘している。

  また、イエレン財務長官が公式および非公式に語ったところでは、長官は状況を注視しつつも、制御不可能なインフレの可能性を心配していない。イエレン氏の考えに詳しい複数の関係者によれば、長官は最近の月間データに驚くべき点はなく、パニックに陥る理由もないと捉えている。

  しかし、どんなに厳密な経済分析であっても政治問題化する可能性があることをホワイトハウスの当局者は承知している。広報活動の観点からは、インフレ加速を「一時的」と表現しても、もはや十分ではないこともホワイトハウスと財務省の当局者は認識している。

  4月の消費者物価指数(CPI)の予想を上回る急上昇を受けて、いったん動揺が広がった米株式市場や米国債市場は先週末にかけて落ち着きを取り戻したが、14日に発表された5月のミシガン大学消費者マインド指数はインフレ懸念を背景に悪化した。

  約10年ぶりの大幅な物価上昇と、国民がそれをどう捉えるかによっては、2022年の中間選挙で民主党が上下両院の僅差のリードを守るのが難しくなる恐れもある。このため政権当局者は物価上昇がいつ落ち着くか具体的な時期は示さなくとも、それを国民にもっとうまく説明する方法を模索している。

  共和党からは既に、カーター政権当時のスタグフレーションと、経済運営で現政権が置かれた状況との類似性を主張する声が上がっているほか、民主党系の著名経済学者のサマーズ元財務長官やファーマン元大統領経済諮問委員会(CEA)委員長らも、3月に成立した大型経済対策が物価に及ぼす影響に懸念を表明している。

  差し当たっての最大の政治的リスクは、バイデン大統領が先に提案した総額4兆ドル(約437兆円)規模のインフラ計画と社会保障拡充計画に対し、インフレ加速を巡る消費者の懸念が支持を切り崩す事態だと大統領の盟友の1人は話す。

  政権内では、国家経済会議(NEC)や行政管理予算局(OMB)、CEA、ハリス副大統領のオフィス、財務省などの担当者が小グループでリスクを監視。大量のデータを点検して潜在的な警戒警報を探し、イエレン長官やディースNEC委員長、ラウズCEA委員長らに定期的に内容を報告している。

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