(ブルームバーグ): 昨年12月、典型的な投資家に米S&P500種株価指数の次の大きな動きについて尋ねたとすれば、3分の2は「上昇」と答えただろう。今同じ質問をした場合、「上昇」と回答する投資家はせいぜい半分だろう。

  米国のリスク市場では最近、一種の心理的な萎縮が見られる。機関投資家はエクスポージャーを抑制しており、人々は守りの姿勢を強めている。株式ファンドでさえ、資金のフローが鈍化しつつある。

  この1週間は映画館チェーンのAMCエンターテインメント・ホールディングスやビデオゲーム販売のゲームストップといった「ミーム銘柄」の熱狂が再燃した。その一方で、バイデン大統領の新たな税制計画や予想より弱い米雇用統計など多くの材料があったにもかかわらず、ミーム株以外はあまり動きが見られなかった。

  重力に逆らうミーム銘柄の上昇は、企業のファンダメンタルズに注意を払う人々に不安を喚起した。株価収益率(PER)がインターネットバブル期以来の高水準で推移する中で、市場はウルフ・リサーチのチーフ投資ストラテジスト、クリス・セニック氏が言う「完璧シナリオ」を反映している。完璧シナリオは経済の見通しが改善を続ける一方、インフレは落ち着いた状態を保つことだ。セニック氏は、これが将来のリターンを制限する可能性があると指摘する。

  セニック氏は顧客向けリポートで「完璧を実現するのは極めて難しい」とした上で、「米株式市場で次に起きる10%の動きは、上昇ではなく下落だとわれわれは確信する」と記述した。

  市場の脅威となる材料には事欠かない。バイデン大統領はインフラ計画を賄うために法人税の引き上げを提案。米金融当局は年内に金融刺激策の一部縮小を検討すると予想されている。エバコアISIが4日公表した投資家と法人顧客を対象に実施した調査では、株式市場で次に起きる10%の動きは上昇と予想する答えは51%と、昨年12月の66%から低下した。

  亀裂が見え始めたのは投資家のセンチメントだけではない。バークレイズのデータによれば、アセットマネジャーらの株式先物へのエクスポージャーは先月、4月に付けたパンデミック(世界的大流行)後のピークから減少。ヘッジファンドのエクスポージャーも2年ぶり高水準から縮小している。

  モルガン・スタンレーの米国株担当チーフストラテジスト、マイク・ウィルソン氏によれば、成長が弱まると同時に金融・財政の支援が細り、歴史的にPERの低下につながった背景を生み出す局面に市場は入った。同氏はリポートで、第1四半期に高バリュエーション銘柄の価値が既に低下し始めており、市場の残りの部分に波及するだろうと指摘した。

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