(ブルームバーグ): 東京都議選(4日投開票)は、小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が後退し、自民党がリードする展開になっている。立憲民主、共産両党も政権批判票を取り込もうと選挙協力を進めており、衆院選を占う試金石として政府の経済政策に影響を与えるとの指摘もある。  

  告示日の6月25日には、菅義偉首相が自民党本部の出陣式でマイクを握り、政策を実現できるのは「政府と一体となって進めていく自民党の候補者だ」と支援を求めた。立憲の枝野幸男代表も同日街頭に立ち、菅政権の新型コロナウイルス対応を批判し、「この秋までにある衆院選で変えなければならない」と訴えた。

  小池知事は告示3日前の22日夜、過度の疲労を理由に静養を発表し入院。30日に退院したが当面公務はテレワークで、選挙戦にも姿は見せていない。4日の記者会見で都民ファを支援するのか問われた際には「改革を目指す方々にエールを送っていきたい」と述べ、明言を避けていた。

  共同通信が25−27日に実施した世論調査では、投票先の政党として自民を挙げた人が31.8%で最も多く、第1党の奪還をうかがう。公明14.1%、共産13.1%、都民ファ12.1%、立憲民主7.1%の順で、都民ファは大幅に後退する可能性があるという。

  23日に開幕が迫る東京五輪については、観客を入れての開催に前向きな自民・公明両党は公約に具体的な記載はなく、大きな議論にはなっていない。都民ファは公約として「無観客」での開催、共産党は開催中止、立憲民主党は感染拡大の懸念が払しょくできない限りは延期か中止するよう求めている。

  都議選後には衆院選を控え、与党内ではコロナ対応のための経済対策や補正予算の編成に向けた動きも今後、本格化する。自民党内の一部には追加の国債発行による大型経済対策の編成を求める動きがある。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、自民が都議会で議席を増やせば、衆院選を前に「政府の経済対策が大型化し、国債が増発されるという心配は今のところする必要はなさそうだ」との考えを示した。

  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「市場は先行きが不透明か見通しやすくなるのかで動く」として、自民が圧勝すれば政権の安定につながるとみて株価にはプラスの材料になると話す。野党が議席を増やすと市場は衆院選で与党の得票が減ると捉え「相場が下落するかもしれない」との見通しも示した。

  第2次安倍晋三前政権の発足から半年後に行われた2013年の都議選では自民が大勝し、アベノミクスが進むとの期待感が強まったことから週明けの相場で円売りが進み、TOPIXも一時前週末比1%を超える上げとなった。自民は1カ月後の参院選でも勝利し、長期政権への基盤を固めた。

  17年の前回選挙では、小池知事が立ち上げた都民ファが都議会第1党に躍進。自民党は議席を57から23まで減らし大敗した。勢いに乗った小池氏は「希望の党」を結党し、3カ月後の衆院選で多数の候補者を擁立したが惨敗した。

  都民ファからは離党者が相次ぎ、4月20日現在の会派所属議員は46議席。うち1人は無所属で立候補した。

  前回選挙で激しく対立した小池氏と自民党との距離感には、4年間で変化が出ている。自民は昨年、2年連続で反対してきた当初予算の採決で賛成に回ったほか、小池氏が再選を果たした知事選では対立候補の擁立を見送った。

  日本大学大学院の岩井奉信講師は、ここ1、2年の都政運営を見ると知事は「すでに軸足を自民、公明に移している」と指摘。都議会の勢力図が変わっても「小池知事の都政運営に大きな支障があるものではない」と分析する。一方で、自公にとって今回の選挙は「菅政権の支持率が低いことがネック」となり、一定の批判票が野党勢力に流れる苦しい戦いでもあるという。

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