(ブルームバーグ): 東京五輪の種目に初めて選ばれたスケートボード。日本代表の西村碧莉選手(19)は、彼女ら選手の活躍が国内での「スケーター」のイメージを覆すきっかけになることを期待している。自身は惜しくもメダルを逃したが、西矢椛選手(13)が金メダルを獲得。掘米雄斗選手(22)に続く快挙を受け急速に関心が高まっている。

  「自分が滑っているところを見て、楽しそう、かっこいいと思ってくれる人が絶対いる。とにかく1回見てもらうことが大事なのかなと思う」。日本でのスケートボードのイメージはまだ良くないと感じる西村選手は16日のインタビューで、その魅力を伝えるためにも、五輪の舞台でベストの滑りを見せたいと話していた。

  手すりや階段など使って街中での滑りを再現するストリートで、25日の男子は堀米選手が金メダルに輝いた。26日の女子は西矢選手が日本人の五輪史上最年少で優勝し、中山楓奈選手(16)も銅メダルを獲得。西村選手は先月、イタリア・ローマで開催された世界選手権で2度目の優勝を果たし、有力な金メダル候補だったが、8位に終わった。

  スケーター一家に生まれた西村選手。父親が学生時代に使っていたスケートボードを初めて手に取ったのは8歳の頃だ。最初は月に一回程度の遊び感覚だったが、友人たちの影響でスクールに通うようになった。自分がやりたいと言ったことに対し家族は全力でサポートしてくれたという。

  小学5年生だった2014年には日本スケートボード協会(AJSA)主催の全国大会で優勝。16年には高度なテクニックを伴う離れ業を競うスポーツの最高峰と言われる「X-GAMES」に出場した。多くの大会が行われる米国の街中で滑っていると「すごいね、と声を掛けてくれる人がいる」ことに驚き、日本との違いを実感した。

  西村選手は現在、米国カリフォルニア州のハンティントンビーチに拠点を置いている。スケートボードが生まれた米国は、日本に比べ専用のスケートパークが圧倒的に多い。「日本はスケートボードをするには少しやりにくい環境ではある」と語る。

  日本ではスケートボードは反抗的な若者の遊びというイメージが根強い。交通が頻繁な公道でのスケートボードの使用は道路交通法で禁じられ、スケーターの多くが近隣住民の通報を受けた警察官に注意されたり、質問されたりした経験を持つ。

  それでも、日本は堀米選手や西村選手など多くの著名なスケーターを輩出してきた。日本人として史上最年少の夏季五輪出場となる開心那選手(12)は来月4日、複雑にくぼんだコースで行われる女子パーク種目に挑む。

  オリンピックを研究している奈良女子大学の石坂友司准教授は、東京五輪で「スポーツとしてのスケートボードが見られれば、ポジティブなイメージが形成される可能性は十分にある」とみている。

  東京五輪の新種目に加わったことで、日本でも若い世代を中心にスケートボードへの関心は高まっている。日本スケートパーク協会によると、17年に100施設だった全国のスケートパークは、21年に243施設まで倍増した。同協会の河崎覚代表理事はジャンプ台などが設置され、初心者には敷居が高い施設ではなく、米国のように「もっと街中で気軽に滑れるのが良い」と語る。

ジェンダー問題見直す機会に

  西村選手は、海外で活躍する数少ない日本人女性スケーターとして、自らのプレーを見て興味を持つ女性が増えることも願っている。同選手は女の子なのにスケートボードをしていると言われたスケーターがいると聞き、「初めてそんなふうに思っている人もいるんだと気付いた」という。

  奈良女子大の石坂准教授は「日本でスケートボードは女性のスポーツとしてほとんど認知されていない。西村選手の活躍はイメージを変えることにつながる」とみる。

  また、日本では男性より女性アスリートの方が金メダル獲得数が多いが、テレビなどでは圧倒的に男性種目への注目度が高いと指摘する。女性アスリートにプライベートな質問をする男女差も存在する。そんなジェンダー問題を見直す機会になると石坂准教授は話す。

  友人とスケートボードを楽しむ会社員の内田典宏さん(23)の周りに女性スケーターを敬遠する仲間はいない。「環境は老若男女変わらないものだと思う。それがスケボーの良いところ」という。

  西村選手は「大会では皆が応援してくれるし、男の子に交じって滑っているのもすごいねって言われる。そういう環境に違和感を覚えたことは一切なかった」と振り返る。彼女の滑りを見てスケートボードを始めた女性からメッセージが届く事もある。そんな時、女性スケーターとして頑張ってきて良かったなと心の底から思う、と笑顔で語った。

(女子ストリートの結果を追加して更新しました)

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