(ブルームバーグ): 中国は環太平洋連携協定(TPP)への加入を正式に申請した。TPPはかつて、中国を孤立させアジア太平洋地域における自国の優位性を確固としたものにする手段として米国が推進していた。

  中国商務省が16日遅くに発表したところによると、中国はTPP加入のための正式な申請書をニュージーランドに提出した。同国はTPPの事務局の役割を担っており、提出後に中国の王文濤商務相がオコナー貿易・輸出振興相と電話会談した。

  TPPは元々、力を増す中国に対抗する経済ブロックを発足させる狙いで米国が構想。当時のオバマ大統領は2016年にアジア太平洋地域の貿易規則を定めるのは米国であり、中国ではないと発言した。だが、後任のトランプ大統領は翌年にTPPから撤退し、日本主導で内容が修正され、まとめ上げられた。

  中国は習近平国家主席が20年に参加に関心を表明して以降、水面下で数カ月にわたって協議を進めていた。現在のTPP加盟国は11カ国で、今年に入り英国も加入を申請していた。

高いハードル

  加入交渉は容易なものにはならない。中国はTPP加盟国オーストラリアの輸出品に多額の関税を課すなど同国と経済・貿易紛争のさなかにある。それでも中国は先週、TPP加入への支持をオーストラリア政府に公に働き掛けていた。

  カナダも中国との争いを抱えている。中国の裁判所がカナダ国籍の男性一人に懲役11年を言い渡し、もう一人も判決待ちの状態にある。いずれも華為技術(ファーウェイ)創業者の娘がカナダで逮捕されたことと関連するとみられている。

  加入交渉は長い時間を要する見込みだ。トラス英国際貿易相(当時)は先月、英国のTPP参加に向けた交渉について、22年末までの完了を目指す方針を明らかにしていた。

  かつて米通商代表部(USTR)の次席代表代行を務め、現在はアジア・ソサエティ政策研究所の副所長であるウェンディー・カトラー氏は、「中国が国有企業や労働、電子商取引、自由なデータの流れ、包括的な市場アクセスへのコミットメントなどに関するTPPのルールをどうやって受け入れるのか予想することは、不可能ではないにしても極めて困難だ」と指摘した。

  一方、中国の法律や世界貿易機関(WTO)に関する著作があるシンガポールマネージメント大学のヘンリー・ガオ准教授(法律学)は、これら国々は米国がTPPに近い将来加入することはなく、中国が最大市場になると認識しているため、意見の相違の一部は時間をかけて解消できるだろうと述べた。ただ、プロセスは数年かかるとも指摘した。

  バイデン米政権はアジア太平洋地域について具体的な通商政策をまだ発表していない。ただ、デジタル貿易協定を目指す案を検討しているとは伝えられている。

(背景や専門家のコメントなどを追加して更新します)

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