(ブルームバーグ): ウォール街ではオフィス復帰に伴う混乱や不安が広がっている。新型コロナウイルスのデルタ変異株が猛威を振るう中、銀行幹部らは従業員の健康や生活に配慮しながらオフィス復帰を進めるという難しい舵取りを迫られている。

  シティグループのロンドン拠点では今月、オフィスに戻る従業員をセラピー犬が出迎えた。JPモルガン・チェースは親のための特別ミーティングなど、不安を抱える従業員にバーチャル形式でのグループセラピーを実施している。みずほフィナンシャルグループの米州部門は、在宅勤務が長く続いた後のオフィス復帰がいかに難しいかを味わった。同社はオフィス復帰を呼び掛けた翌日、家族にワクチン未接種者がいる場合の在宅勤務は従来通り認めるなど、勤務の柔軟性を明確にする文書を出した。

  「握手はできるのだろうか。昨年から会っていない同僚とハグはできるのだろうか」。シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は先週、リンクトインへの投稿でこう問いかけ、「各国の新型コロナ対策がそれぞれ異なる段階にある中、オフィス復帰の順番が来た時には全員が多くの疑問を持つと思う」と続けた。

  オフィスセキュリティー会社カッスル・システムズによると、ニューヨークのオフィス復帰率は9月15日時点で約28%。前週の19%から急増し、ロックダウン(都市封鎖)が行われた2020年3月以降で最も高い水準となった。

  シティは従業員が通勤で地下鉄に乗らずに済むよう、本社のあるトライベッカ地区と主要公共交通機関を結ぶシャトルバスを走らせている。ゴールドマンは無料の食事とスポーツジムの優待会員権を従業員に提供。バンク・オブ・アメリカ(BofA)はシカゴのオフィスに戻る一部従業員にギフト入りバッグを配った。

  一方、デルタ変異株の感染拡大に伴う各制限の強化は、デービッド・ソロモンCEOがオフィス復帰を強力に推進してきたゴールドマンにも変化をもたらしている。

  夏にインターンを迎えた際、同行のジャージーシティのオフィスでは、密になった部屋でソロモン氏が多くの学生からの質問に答えていた。しかし、多くの新入社員を迎えた先週は、本社ビルの大きな会議室でソーシャルディスタンスが守られ、マスクも着用されていた。 

  大手コンサルティング会社KPMGで米銀・資本市場部門を率いるピーター・トレンテ氏は「業界全体でも、ある特定の企業の中でさえも、万能な解決策は存在しない」と語った。

©2021 Bloomberg L.P.