(ブルームバーグ): 岸田文雄首相は衆院解散を受けた14日夜の記者会見で、「成長と分配」を重視する自身の経済政策について、「世界の潮流」と繰り返し強調した。経済政策の方向性を示すことは、衆院選の争点の一つとの見方を示した。

  成長と分配を考えていくことが、「これこそ今、世界的な経済政策の潮流であると信じている」と説明。その後も「世界の潮流にも乗り遅れないように日本がしっかりとした経済政策を進めていくんだという大きな方向性について説明していく」「間違いなく世界の潮流はこっちだ」と続けた。

  野党からは、岸田首相の経済政策が安倍晋三元首相のアベノミクスや菅義偉政権の経済政策と変わらないとの批判が出ていた。

  岸田首相は、自身の経済政策が市場任せではなく、富裕層が富めば他の層にも利益が行き渡るトリクルダウン任せでもないとした上で、「能動的に成長と分配を考えていく」と違いを強調。幅広い層の所得を引き上げた後に消費を喚起すれば供給側も投資や研究開発に資金を使い、経済の好循環が完成するとの持論を展開した。

  野党の主張には「分配を言うだけでは成長ができなくなり、分配するパイもなくなってしまう。この誤りを二度と繰り返してはならない」と反論した。

  ただ、経済の好循環が完成する時期は、コロナの影響で変わってくるとして明言しなかった。「何年後に結果が出るんだという答えがほしい思いは分かるが、今の状況を考えると方向性をまず示すことが大事であり、軽々しく何年後ということはかえって無責任になりかねない」と話した。  

  脱炭素については、前政権が掲げた目標を堅持するとした上で「現実を考えると大変な努力が必要だ」と述べた。中でも全国で雇用550万人といわれる自動車産業への影響は、国民にとって切実な問題だと指摘。企業には「新技術を使って経済を発展させ、雇用を吸収していく発想を持っていくことが大事だ」と呼び掛けた。

他の発言

衆院選今回の選挙は未来選択選挙大きな争点はコロナ対策、コロナ後の社会像コロナ対策全体像の骨格を15日に発表する今夏の2倍の感染者に対応できる医療体制つくる3回目の接種を12月に開始、経口治療薬を年内実用化経口治療薬の国内開発支援を経済対策に盛り込むGOTOは安全安心確保した制度に見直し、再開準備整える経済対策数十兆円規模の経済対策を最優先で届ける−衆院選後に新しい資本主義実現会議は15日にメンバー・検討項目決定経済対策に10兆円の大学ファンド具体化を盛り込むTSMCの民間投資は総額1兆円規模、経済対策に支援盛り込む科学技術革新、地方デジタル化、経済安全保障を3本柱に成長幅広い人の所得を引き上げ、消費を喚起する環境・エネルギーCOP26は大変重要、参加形式は検討した上で判断30年の温暖化ガス46%削減、50年の脱炭素化目標はしっかりと堅持する原子力も選択肢として用意しておくべきだ再生可能エネルギー一本足打法では安定供給に対応できず自動車産業がどうなるかは多くの国民にとって切実−脱炭素温暖化対策は経済成長のエンジンとする発想を持つことが大事外交外交を本格化させたい、第一は米国

  衆院選は、19日公示、31日投開票で、事実上の選挙戦が始まった。解散から投開票までが17日間の短期決戦となる。衆院定数465のうち解散前は自民276議席で、単独で過半数を占めていた。連立を組む公明と合わせて305議席で全体の65%。第2勢力の立憲民主は112議席だった。

  岸田首相は選挙で国民の信任を得た上で、経済対策を速やかにとりまとめる考えだ。自民党の公約では、分配政策で分厚い中間層を再構築する目標を掲げ、賃上げに積極的な企業への税制支援や、長期的な視点での経営を促すため四半期開示の見直しも盛り込んだ。

  政権発足直後の世論調査では、菅政権の終盤よりは改善したが、複数の調査で5割を切る低調なスタートとなった。ただ政党支持率は自民の41.2%(NHKの10月調査)に対し、立憲民主は6.1%と開きがあり、政権交代の機運は高まっていない。

  立憲民主党も衆院選の公約は分配政策を重視し、「一億総中流社会の復活」を訴える。新型コロナに伴う時限的な経済対策として、年収1000万円程度以下の所得税実質免除や、消費税率を5%に引き下げると主張している。

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