(ブルームバーグ):

過去2カ月間に急騰と急落を繰り返した日経平均株価が、2018年の同時期と似たチャートの形状となっている。年末にかけて一段安へと向かった3年前をリスクシナリオとして見るかどうかは、景気循環と国内景気が鍵になるとの声が出ている。

  日経平均は8月20日の年初来安値から徐々に切り返し、菅義偉前首相の自民党総裁選への不出馬方針を好感して9月14日の年初来高値まで14%上昇した。しかし、政治改革への期待後退や中国恒大集団の経営不透明感などが重なった10月初旬には9月の上げを帳消しにする場面が出るなど、目まぐるしい値動きとなっている。

  一方、18年は8月13日に安値を付けた後、10月2日の年初来高値まで11%上昇。10月中旬には過去1カ月間の上げを失い、その後はリバウンドを挟みながらも一段安へ向かった。華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されるなど、米中通商摩擦の激化が深刻化していた12月25日には年初来安値を付け、10月高値から21%下落する結果となった。

共通点

  現在と18年の株価にはもう1つ共通点がある。1、2月の急騰で高値を付け、その高値を再び更新するまでに半年以上の長い調整期間を経ている点だ。その高値更新も、年初の高値をわずかに上回った程度で押し返されている。三菱UFJ国際投信の石金淳チーフストラテジストは3年前と現在のチャート形状について、「似ていて気持ち悪い。不気味だ」と語る。石金氏によると、米金融政策と中国経済の先行きに市場の懸念がある点で、当時と現在は重なるという。

  18年夏場以降は米国の利上げ末期で長期金利が3.2%まで上昇し、金利が株価の重しとなる中で景気の減速感も漂っていた。米景況感の一つの目安である米供給管理協会(ISM)製造業景況指数は頭打ちとなり、その後は一気に悪化へ向かった。トランプ米大統領のもとで米国と中国の通商摩擦が激化し、世界第2位の中国経済への悪影響も懸念されていた時期にあたる。

  一方、今回は新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化しながらもインフレ懸念がくすぶる中、米金融当局は11月にも資産購入のテーパリング(段階的縮小)に踏み出す見込み。中国経済は減速傾向を強め、中国恒大集団の経営問題も不動産業界や景気への影を落とす。

  みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは現在の日経平均について、「短期間に急騰と急落を経験したことで上値にしこりができた。簡単に上昇軌道に戻れないだろう」と予想する。チャート形状が似ているからといって今回も3年前と同じ軌道をたどるとは限らないものの、「テーパリングや米債務上限問題などの動向次第では18年末のようなリスクがあるとチャートは警鐘を鳴らしている」とみる。

相違点

  もっとも、3年前と現在では投資環境で異なる面もあるとして、現在のところ先行きを悲観視する向きは少数派だ。三菱U国際の石金氏は「米利上げ末期は株価が下がりやすいが、現在は利上げどころかまだテーパリングも始まっておらず、金融環境は大きく違う」と分析。米ISM製造業景況指数で3年間に及ぶ一つの景気サイクルが終わりを示した前回に対し、今回は回復からまだ1年程度で、「落ちるには早すぎる」という。

  また、アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、国内の経済環境の良さに注目する。サプライチェーン問題で世界景気の停滞やインフレの懸念は残る半面、国内では経済活動の正常化が進む中で、「衆院選後に政治が安定して経済対策が打たれればさらに景気を押し上げる。内需が外需をカバーするため大きな株価下落は考えづらい」と言う。現在はまだ下げを取り戻す局面にあるとし、年末まで日経平均3万1000円の可能性はあると予想した。

やや風景異なるTOPIX

  3年前と不気味な一致を示す点が多い日経平均に比べ、東証1部全体の値動きを示すTOPIXのチャート状況はやや景色が異なる面がある。18年のTOPIXは年初の高値を10月に上回れず、年末にかけて日経平均と同様に急落へと向かった。ただ、今回は3月高値を9月高値が大きく上回っただけでなく、9月以降の急落局面でも投資家の長期採算ラインである200日が上昇トレンドのまま下値支持線として機能している。

(最終段落にTOPIXの状況を追記します)

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