(ブルームバーグ):

ソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ最高執行責任者(COO)は、同社の中南米投資ファンドのスピンオフ(分離・独立)を提唱しており、これに反対する創業者の孫正義社長と意見が対立する格好となっている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  中南米ファンドは巨大なビジョン・ファンドほどの注目こそ集めていないものの、2019年3月の立ち上げ以降、運用資産規模は80億ドル(約9140億円)にまで拡大した。最初の中南米ファンドはクラウレ氏の下、計48社に出資して米ドルベースの内部収益率が85%に達している。

  クラウレ氏はスピンオフについて、同事業を強化するとともにソフトバンクGに価値を生み出し、自身の報酬も増やす手段として考えているという。非公開情報であることを理由に関係者らが匿名を条件に話した。

  孫社長は会社発表の文書で「ソフトバンクGの中南米ファンドをスピンアウトする議論はなかった」と説明。さらに「マルセロと私は強い絆で結ばれており、彼はソフトバンクチームの貴重なメンバーだ」と述べた。

  孫氏との意見対立を受けてクラウレ氏が退社する可能性もあると、関係者らは指摘。クラウレ氏は過去にも辞任の考えを持ち出したことがあるが、実行には移さなかった。中南米のスピンオフを巡る見解相違はあるものの、ソフトバンクGがクラウレ氏創業の米携帯端末卸売会社ブライトスターを2013年に買収して以降、両氏は緊密な関係を築いてきた。

  「マルセロは気まぐれかもしれないが、実際にそうなるとは思わない」と、関係者の1人は同氏の退社見通しについて述べた。

  ソフトバンクGは先月、中南米のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未公開企業)25社のうち、デリバリーアプリを手掛けるコロンビアのラッピなど15社に出資したと発表。クラウレ氏はデジタル資産のプラットフォームを展開するブラジルのメルカド・ビットコインへの投資など、ソフトバンクGの暗号資産(仮想通貨)分野への進出も率いている。

  関係者らによれば、孫氏はスピンオフについて、ソフトバンクGの株主にほとんど利益をもたらさないほか、経営やガバナンスを不必要に複雑にすると考えている。クラウレ氏の中南米ファンドにさらなる利害関係者が生まれれば、ソフトバンクGはディールメーキングや利益配分での利益相反に対応しなければならなくなる。同ファンドはビジョン・ファンドと比較して規模が小さいため、こうした負担の増加は受け入れ難いと関係者らは語った。

(孫氏のコメントや背景などを追加して更新します)

©2021 Bloomberg L.P.