(ブルームバーグ):

中国経済は投資家が認識するよりも大きく減速するリスクがある。習近平国家主席による不動産部門への依存度引き下げ姿勢と、教育やテクノロジー業界への締め付けに加え、電力不足と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が背景にある。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)やシティグループは、中国の今年の成長率がコンセンサスの8.2%に届かないと見込み、鈍い成長は来年も続き5%を下回りかねないと警告する。2020年の2.3%を除けば、約30年ぶりの低い成長ということになる。

  BofAのストラテジストらは、鄧小平氏が1970年代後半に打ち出した改革開放路線や、朱鎔基氏による1990年代の国有企業改革と金融改革に匹敵するような数十年に1度の経済の再構築を習主席が考えている可能性に言及。アジェイ・カプール氏率いるストラテジストは先週の顧客向けリポートで、今年の成長率を7.7%、来年を4%とする見通しを示した。

  中国政府は自国を世界2位の経済大国に押し上げた高成長モデルから移行しようとしている。金融リスクを緩和するために債務の伸びを抑制し、不平等を和らげ、米国からのテクノロジー関連規制の脅威に対抗するためハイテク産業への資金振り向けに動いている。

  国内総生産(GDP)の伸びは7−9月(第3四半期)に減速したが、電力不足が続けば一段の苦境を迎える可能性が高い。

中国経済、7〜9月に減速−不動産低迷やエネルギー危機が打撃

  中国政府は短期的な刺激策として不動産セクターを利用しない立場を繰り返しているものの、ここ数週間は市中銀行に住宅ローン貸し出しを増やすよう要請するなど、政策を一部緩める可能性を示唆している。元世界銀行の中国担当局長で現在はシンガポール国立大学東アジア研究所を率いるバート・ホフマン氏は、今後数カ月に政策緩和が打ち出されるとすれば、その目的は成長支援ではなく「大惨事の阻止」だと語った。

  中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は最近、今年の成長率を約8%とする見通しを示しているが、ブルームバーグ・エコノミクスの試算によれば、これを達成するには10−12月(第4四半期)成長率は3.9%で済む。

 

  「中国経済のエンジンが止まりかければ、世界中で成長が勢いを失う」とHSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏は語る。

  一方で中国のCSI300指数が今年、ピークから18%下げた調整の影響が世界的に広がらなかったことを踏まえると、金融市場への波及はより抑えられる可能性があると、ロイヤル・バンク・オブ・カナダのアジア為替戦略責任者、アルビン・タン氏は語った。

  ルーミス・セイレス・インベストメンツ・アジアの中国担当エコノミスト、ボー・チュアン氏は来年上期は不動産投資が10%落ち込み得るが、秋の共産党大会を控えた財政政策への期待などから、通年で5%成長は達成可能と見込む。同氏は中国政府が来年の成長率目標を5.5%前後に設定すると予想する。

  ただ不動産開発の中国恒大集団を巡る懸念と最近の減速から、慎重な向きもある。BofAのストラテジストは、不動産価格が10%下落する無秩序な市場調整を含む「弱気シナリオ」に言及し、その場合に成長率は今年7.5%、2022年には2.2%の可能性があるとした。

  このほか、中国の政策当局が成長モードに戻す必要性を認識してもそのスイッチ交換が容易でないリスクもある。シティの余向栄氏率いるエコノミストはリポートで、工業生産の足かせとなっている電力不足がインフラ投資の拡大による成長下支えをより難しくするだろうと指摘。そうした政策が奏功し得るのは、来年に電力問題が緩和された場合に限定されるだろうと分析した。

©2021 Bloomberg L.P.