(ブルームバーグ): 中国人民元は今年、アジアでの優位性を脅かす多くのリスクに見舞われたものの、その地位をすぐに失う兆しはほとんど見受けられない。

  中国の輸出増加や中国国債への資金流入、キャリートレードの魅力的なリターンが人民元の一段高を促している。米金融当局の刺激策縮小は相場に織り込まれ、中国恒大集団の債務危機がもたらす悪影響が封じ込まれれば、こうした流れが反転する公算は小さい。

  スコシア銀行の外国為替ストラテジスト、高奇氏は「中国の輸出ブームが2022年1−3月(第1四半期)まで続き、中国は大きな貿易黒字を維持する」と予想。米中協議が一段と進展すれば、人民元は1ドル=6.20元に値上がりし得るとの見方を示した。そうなれば、人民元が15年に事実上切り下げられる前の元高水準となる。

  元高進行なら資金流入が一段と促され、元需要がさらに高まる可能性があり、中国政府が目指している人民元のグローバル化を後押しする。ただ元高は一方で、長期的には中国の輸出競争力を損なうリスクを伴う。次に示す4つのチャートは、それでも人民元の上昇が続く可能性が高い理由を説明している。

輸出

  他の指標が中国経済の成長が緩やかであることを示しているものの、中国の輸出は引き続き堅調だ。

中国の輸出額、9月は月間記録更新−電力危機でも予想上回る伸び 

  中国の商業銀行は9月、顧客向けに人民元を1737億元(約3兆1000億円)買い越した。これは本土の個人・企業が外貨よりも人民元の保有を選好していることを示唆する。

ドル高への耐性

  人民元の他の24通貨に対する動きを示すブルームバーグの指数は16年以来の高水準で、ドル高に対する人民元の耐性を裏付けている。アジア新興国通貨に対して、人民元はタイ・バーツで今年約12%上昇、韓国ウォンでは9%値上がりした。

中国国債への資金流入

  外国勢による中国国債購入は9月、8カ月ぶりの高水準となった。 FTSEラッセルが債券の旗艦指数「FTSE世界国債インデックス」(WGBI)に中国国債を10月から3年かけて段階的に組み入れることで、こうした動きが加速する可能性もある。

FTSEラッセル、3年かけて中国国債を指数に組み入れ−10月から

   UBSグループはWGBI組み入れで月平均36億ドル(約4100億円)の流入が見込まれると推計する。もう1つのプラス要因は、10年物の中国国債と米国債の大きな利回り格差だ。メイバンク・キムエン・セキュリティーズは今後数カ月で格差がある程度縮小するものの、十分な格差が続くとみている。

キャリートレード

  ブルームバーグがまとめたデータによると、人民元は今年、リスク調整ベースでアジア通貨の中で最良のキャリートレードリターンを達成。元のボラティリティーが抑制されていることを踏まえれば、これが変わる可能性は低い。中国当局者は人民元がほぼ安定し続けると想定する。国家外為管理局(SAFE)の王春英報道官は22日、米連邦準備制度の政策正常化が人民元の安定した勢いと中国の国際収支ポジションを損ねることはないと述べた。

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