(ブルームバーグ): 世界は新型コロナウイルスと共存しながらの経済再開を加速させつつある。今月に入ってからの月間死者数はほぼ1年ぶり低水準まで減少している。しかし、共存の戦略を採用してコロナ時代の比較的安全な場所となった国々に、冬の寒さという大きな試練が訪れようとしている。

  ブルームバーグが毎月まとめる世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」では10月も、欧州諸国が上位を占めた。また、ワクチン接種を済ませた市民により多くの自由を認める欧州と同じ戦略を採用したアラブ首長国連邦(UAE)とチリがトップ10圏内に浮上した。日本も16位と、先月から13段階上げた。

  1位は引き続きアイルランド。感染例は増えたものの、成人の90%以上がワクチン接種を済ませ感染と死亡の連鎖を弱めた同国は、慎重ながらも経済活動を再開させている。バーやレストランの営業時間はワクチン接種済みの人に対してなら通常通りだ。入院患者は1月の流行時の4分の1程度に減少。同国に拠点を置く多国籍企業の恩恵で国内総生産(GDP)が伸びたことも順位に寄与した。ただ国内経済の低迷は見えにくくなっているかもしれない。

  スペインとUAEが僅差で続き、トップ3までを占めた。パンデミック(世界的大流行)の初期に世界最悪級の感染拡大に見舞われたスペインでは、夏季のデルタ変異株流行後、感染者数と検査陽性率、死者数がそろって減少。集会やイベント関連の抑制措置はおおむね緩和され、外出制限も解除された。フライト能力は新型コロナ前の70%余りの水準まで戻っている。UAEは新規感染者数が10月に1年余りで最少となり、3ランク順位を上げた。ただ、数カ月に及ぶドバイ国際博覧会の開催で新たなリスクに直面するかもしれない。

  米国の順位は2段階上がり26位だったが、一定水準にとどまるワクチン接種率を高め、デルタ株感染による比較的高い死亡率を抑えない限り、一段の圧力に直面する可能性がある。英国は感染者数が増え、9ランク下げて25位。

  東南アジア諸国は10月も、ランキングの下位を占めた。下位6カ国には3カ月連続でインドネシアとマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンが入った。東南アジア地域の感染は最悪期を過ぎた可能性があり、特にマレーシアでワクチン接種が進展したが、輸出主導のこれらの国々の経済は今も、デルタ株による打撃に苦しんでいる。各国は経済再開への明確な道筋づくりを急いでいるが、欧州と米国に追いつくには時間がかかるだろう。

 

  COVID耐性ランキングは、どの国・地域が社会・経済への打撃を最小限に抑えながら最も効果的に対応できているかを示す月ごとのスナップショットだ。感染抑制や医療の質、ワクチン接種率、死亡率、渡航再開・国境閉鎖緩和の進展度合いなど12のデータ指標に基づいて、新型コロナに立ち向かう世界の53の国・地域を比較している。

ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明

  欧州の成功は、ワクチン接種が進んだ後としては初めての冬に試されることになる。接種間隔を長めにし、隔離なし入域は接種済みの人におおむね限定する戦略は、デルタ株流行の中でも死者数を低く抑えることに寄与した。しかし、気温が下がるにつれ、英国やベルギー、アイルランドでは既に感染が増え始めている。

  ランキングの下半分からわずか1カ月で8位に浮上したチリの躍進は、一時は世界最悪だった南米全体の回復を反映している。チリでは数百万人がブースター接種を受け、国内の制限を緩和するともにワクチン済みの外国人旅行者に対しては5日間の隔離を条件に国境を開いた。11月には隔離規則をさらに緩和する計画だ。

  一方、経済再開を巡る中国本土および香港と世界の他の国・地域の格差は拡大。中国本土と香港はそれぞれ28位と21位に順位を下げた。中国政府は厳しい国境管理を必要とするコロナゼロ戦略を堅持しているが、各地で感染が発生する頻度は増しており経済への重しになっている。ゼロ戦略を取っていたオーストラリアは来月、国境を開く。10月に複数の大都市のロックダウン(都市封鎖)を終わらせた同国は、4段階上げて30位となった。

  インドは先月と変わらず45位。海外からの渡航者に対して世界で最も閉ざされた国の一つだ。ただ、感染者の減少が続きワクチン接種も10億回を超えたことから、11月半ばには観光やその他短期滞在の受け入れを再開する。

  先進国が進めるブースター接種によって、冬とクリスマスが近づくこの時期に感染の次なる波を食い止められるのか。そして、それは世界の平等なワクチン普及にどんな影響をもたらすのか。あるいは冬の寒さが影響し、この時期に比較的温暖な中東や中南米、アジアの一部が順位を上げるのか。

  これらの問いが、次回11月のランキングの焦点になる。

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