(ブルームバーグ): カジノに上客を案内するいわゆる「ジャンケット」事業を手掛ける太陽城集団(サンシティー・グループ・ホールディングス)の周焯華最高経営責任者(CEO)に対し、中国当局が逮捕状を出したとのニュースが26日に流れると、マカオにある同社カジノのVIPルームの雰囲気は一変した。

  事情に詳しい関係者によれば、ブラックジャックやバカラなどに興じるためのスペースを先週末訪れた顧客はほとんどいなかった。マカオでジャンケット最大手の同社と関係しているとみられたい者はいなかったと、事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べた。

  周CEOは27日、警察に拘束された。29日までに太陽城の株式は売買停止となり、米国と香港に上場しているカジノ株は売られた。同社のジャンケット業務を含まない香港上場部門の株価は30日午前の取引で一時、半値近くまで下げた。

マカオのカジノ株が下落−「ジャンケット」事業の大物逮捕で

  マカオのカジノ界で最もよく知られた人物の1人であり、私生活が香港のタブロイド紙をにぎわす周CEOの逮捕は、すでに政府の介入が強まっているカジノ業界に衝撃を与えた。香港株式市場では9月半ば、マカオのカジノ規制の見直し案を受け関連銘柄が急落したが、それ以上の打撃だとの見方もある。規制が最終的にどうなるかはまだ分からないが、大物逮捕のメッセージは明らかだ。

マカオのカジノ株指数急落、当局者が規制見直し提案−監督強化懸念

  コンサルティング会社IGamiXのマカオ在勤マネジングパートナー、ベン・リー氏は、周CEO逮捕は規制見直し案よりも「中国がマカオをこの先どうするつもりかという点ではるかに明快だ」と指摘。根底にあるメッセージは、マカオのカジノ業界は本土でプロモーション活動をすべきではなく、運営会社は訪問客を引き付けるためカジノ以外の分野での開発強化を重視すべきだということだとの見方を示した。

  それは本質的に、ジャンケット業務がなくなることを意味する。プライベートジェットやホテルのスイートルームを手配し、中国本土の顧客をマカオに連れて行き、さらには人民元や資産で返済可能な賭け金を香港ドルで貸し付ける。こうしたジャンケットのネットワークはマカオの年間VIPカジノ売上高約30億ドル(約3400億円)の4分の3程度をもたらしている。

  今回の逮捕劇はこうした慣行全体に中国政府が目を光らせていることを示している。

「ブラックホール」

  「中国経済に減速の兆しがあり、当局は経済からの資金流出を食い止めようと懸念を強めている。マカオのカジノ業界は常にブラックホールとなってきた」とリー氏は言う。

  太陽城に対する捜査は、周CEOを含め11人の逮捕につながった。本土外でギャンブルのプラットフォームを構築し、違法なバーチャル賭博とマネーロンダリング(資金洗浄)を行った容疑だ。

  JPモルガン・チェースのDS・キム氏らアナリストによると、太陽城はマカオのジャンケット市場の40%余りを占める。マカオではジャンケット主導のVIP売上高が今後数週間で半減する可能性があると予想。2023年までには、VIPセクターはカジノ事業者の利益の4%程度しかもたらすことができなくなるとみている。19年は15%だった。

  マカオのカジノ運営会社6社は表向き、太陽城のようなジャンケット企業とは無関係だが、大金を賭ける顧客を呼び込むため、何十年もそうした企業に頼ってきた。今年のカジノ収入680億ドルの約35%はVIPセグメントからだ。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、アンジェラ・ハンリー氏によると、ジャンケットがなければ、マカオのカジノ売上高は34%減少し、8%減益となる可能性がある。

  中国国内でカジノが合法なのはマカオだけだ。JPモルガンのキム氏は11月27日のリポートで、周CEOのような人物が「ジャンケット事業を運営し、通常のジャンケット活動を行っただけで」逮捕される可能性があるという事実は「全てのジャンケット事業者の背筋を凍らせるだろう」とコメントした。 

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