(ブルームバーグ): スイスの大手銀行クレディ・スイス・グループの経営立て直しを託されていたバンカー、アントニオ・ホルタオソリオ会長が新型コロナウイルスの隔離規則違反を巡り就任からわずか9カ月で失脚し、一連の不祥事からの脱却に苦しむ同行に新たな混乱が生じた。

  ホルタオソリオ会長の辞任は17日未明に急きょ発表された。同行の経営が金融危機後で最も動揺した時期に個人の責任を重視する企業文化を浸透させると約束した再建スペシャリストの在職期間を突然終わらせるものとなった。後任には同行のリスク委員会トップを務める取締役、アクセル・P・リーマン氏が起用された。

  ロイズ・バンキング・グループの経営を再建した手腕が評価され英国のナイト爵位を授与された経歴を持つホルタオソリオ氏は、スイスと英国の隔離手続きに違反したとの報道を巡る調査の後に辞任。規則を無視する経済界や政界、スポーツ界のエリートに対する風当たりが強まっていることを浮き彫りにした。

  クレディ・スイスはグリーンシル・キャピタル関連のファンド凍結やアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻の影響で人材流出が続いた後、経営に安定をもたらす役割をホルタオソリオ氏に期待していただけに、辞任は最悪のタイミングだ。クレディ・スイスの株価は17日、前週末比2.3%安で終了。

  隔離規則違反のニュースが先月伝わる前でさえ、ホルタオソリオ氏のリーダーシップにはクレディ・スイス内でさまざまな評価があった。一部の幹部は辞任劇の前に匿名を条件に、57歳のホルタオソリオ氏の率直なアプローチこそ銀行が必要としているものだと述べ、ニューヨークやロンドン、パリのトレーディングフロアに足を運んでいることを高く評価していた。一方で、同氏が社内の対立を生じさせていると指摘する向きもいた。

  リーマン新会長とクレディ・スイスのトーマス・ゴットシュタイン最高経営責任者(CEO)にとっては、人材流出や株価下落を受けて、従業員と株主の信頼回復が課題だ。ホルタオソリオ氏は、投資銀行からウェルスマネジメントに経営資源をシフトし、アルケゴスに絡む不祥事の舞台となったプライムブローカレッジ事業からの撤退を決めた昨年遅くの戦略転換の立案者と広く受け止められていた。

  メルボルン・ビジネススクールのスベン・フェルドマン副学部長は「会長が法を超越するという考えは、同行全体に間違ったシグナルを送ることになっていただろう。会長辞任により、同行は規則違反を一切容赦せず、企業文化の改革に真剣であることを示していく」と指摘した。

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