(ブルームバーグ): 国内でオミクロン変異株の感染が拡大する中で、新型コロナウイルス感染症の分類を季節性インフルエンザと同じ水準に引き下げることを求める声が高まっている。デルタ株など従来の新型コロナウイルス株に比べオミクロン株では重症者数が相対的に少ないことなどが背景にある。

  感染症法上では感染力や致死率などを基に感染症が1類から5類まで5段階に分類され、新型コロナは現状結核などと同じ2番目に深刻な「2類相当」とされているが、安倍晋三元首相や東京都の小池百合子知事、松井一郎大阪市長らが、季節性インフルエンザと同じ5類への変更の必要性を訴え始めている。

  安倍元首相は「今年はさらに踏み込み、新型コロナの法律上の位置付けを変更してはどうか」と読売新聞のインタビューで述べた。

  小池知事は13日の会見で「感染は止める、社会は止めない。この両方を行っていかなければいけない」とし、国に対し5類への変更も含めて「科学的な知見を集めていただくようお願いしたい」と述べた。

  2類相当となっている新型コロナ感染症は、国立の総合病院など特定の医療機関が患者に対応しており、一部の医療機関や保健所の負担が大きい。ワクチン接種が進展したことで重症化のリスクも抑制されており、米メルクの飲み薬もすでに承認された。分類を引き下げることが出来れば、対応できる医療機関が増え医療現場の負担集中を解消できるメリットがある。

  1日には534人だった全国の新規感染者数は18日に3万2097人と3週間近くで急増した。19日には政府が東京都を含む13都県で「まん延防止等重点措置」の適用を決めた。一方で全国の重症者数の増加ペースは。1日の51人から18日時点で281人と感染者数の伸びに対して緩やかだ。

  海外でも同様の傾向が見られる。オミクロン株を最初に特定した南アフリカでは、国の医療研究評議会の調査で、オミクロン株流行期の死亡者数は全入院患者の4.5%にすぎず、これまでの21%を大きく下回ることが明らかになった。首都プレトリアのスティーブ・ビコ学術病院の患者データを分析した研究者らは、パンデミック(世界的大流行)が終わりに向かっていることを示唆するかもしれないとの見解を示した。

  しかし、岸田文雄首相は新型コロナの分類変更について慎重な姿勢を崩さない。13日の会見で「現状、感染が急拡大している状況の中で分類を変更するということは現実的ではない」との見解を示した。ウイルスが変異を繰り返すことから、分類を引き下げた後に新たな変異株が出現して再度厳格な対応を迫られた場合には「なかなか大きな問題を引き起こしてしまう」と述べた。

新たな問題も

  また、新型コロナの分類を下げることで新たな問題が生じる可能性もある。入院措置は原則不要となる一方で無症状でも他人にうつすことがあるため、感染拡大を招きやすくなる恐れがある。さらに、現在は公費で賄われている入院費用が自己負担となった場合、感染者が入院を拒否する可能性も出てくる。

  新型コロナ対策を助言する厚生労働省の専門家組織の座長を勤める国立感染症研究所の脇田隆字所長は13日の会合で、「いま、陽性者に療養してもらい、流行拡大を抑えるのが大切」だと強調した。

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