(ブルームバーグ): 米国では賃金の伸びが頭打ちになりそうだ。労働者にとっては残念な状況だが、米連邦準備制度理事会(FRB)には歓迎される。

  この1年は大幅昇給で気前の良さを見せてきた企業だが、これ以上の増額は利益を圧迫すると警戒するようになっている。こうした状況は人材紹介会社や企業経営者、各種調査からみてとれる。

  来週発表の5月雇用統計では、平均時給の伸びが前年比5.2%と、4月の5.5%からは減速が予想されている。いずれもこの指標が始まった2007年以来で最も高い部類に入る。

  雇用主はこれまでのところ、労働コスト上昇を顧客に転嫁できているが、価格上昇は需要を抑制し始める臨界点に近づいている可能性がある。40年ぶりの強力なインフレを退治するという責務に全力で闘うFRBにとって、それこそ望むところだ。

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  ミルウォーキーに本社を置く人材サービス会社、マンパワーグループのヨナス・プライジング最高経営責任者(CEO)は「雇用主が『もう限界だ』と嘆くような賃金インフレのレベルにすでに到達している」と指摘する。

  こうした心理は米金融当局の励みになるはずだ。当局は経済を軟着陸に誘導する上で、物価圧力を抑制するためにはインフレ期待がしっかりとつなぎ止められているという認識が欠かせないと考えている。

  米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、4月に前月比0.2%上昇、前年同月比では6.3%上昇した。

  これまでの昇給分が食品やガソリンなどの価格上昇に侵食されており、労働者は苦しい思いをさせられている。

  FRBが25日公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3−4日開催)には、「価格上昇が売り上げに響いているとのリポートがみられるようになったと、数人の参加者が指摘した」とある。この状況は利幅が薄い中小企業で特に顕著になっている。  

  ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、スペンサー・ヒル氏によれば、賃金の伸びは年末までに4.5%に減速する見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時昇給など、一時的な要因がなくなることが背景にある。FRBが目標とする2%のインフレ率と整合するには、賃金の伸びは3.5%から4%に落ち着かなくてはならないと同氏はみており、その水準にある程度近づくと予想される。「FRBにとってそこから先の仕事はやりやすくなる」と同氏は今週、顧客へのリポートで述べた。

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