「住まいが都市をつくる」書評 個から全体へ 空間の問題史

「住まいが都市をつくる」書評 個から全体へ 空間の問題史

住まいが都市をつくる モダニズム建築のアナザー・ストーリー [著]小沢明

 「住まいが都市をつくる」の「住まい」は両義性をもつ。すなわちそれは住む場所としての住まいであると同時に、住まい方としての住まいでもある。「いつも建築以前に住むことがあった」(帯のコピー文)というのはこのことだろう。
 住居があって住む(住めば都)というより、住むことができて初めて住まいが形態を与えられる。本書がモダニズムの都市建築を論じるのはこのような視点からである。
 建築史を画する近代以前の建築、例えば、バロックやゴシックなどの建築は、都市という文脈を必要としない。それらは額縁に収まる絵画のように周囲から隔絶し、辺りを睥睨する。
 しかし、産業革命に伴って都市化が進むと、建築はいやおうなく、都市の中の都市建築として構想されざるをえない。他の建築、あるいは街路や広場とどのような折り合いをつけるか。都市に住むとはどういうことか。そもそも都市とは何か。このことを考えるために、著者は個人の住居であるアーバン・ヴィラに焦点を合わせ、幾人かの建築家とその作品を選ぶ。
 本書の構成は明確である。単独のヴィラから、一人の建築家が設計した複合的ヴィラへ。すなわち個から全体へ、住居から都市へ、という流れである。
 躓(つまず)きの石が、中間の章で論じられるル・コルビュジエのヴィラ・サヴォワである。初期のファレ邸やシュウォブ邸が地域性や都市性と連絡を保っていたのに対し、建築史上名高いこのヴィラは自由度、自律性を高め、周囲から浮き立つ孤高の建築という観がある。公私空間の連繋に心を砕いた槇(まき)文彦の代官山ヒルサイドテラスとの違いは明らかであろう。
 建築史であり問題史でもある本書は、多くの示唆を与える。建築が残余空間としてのオープンスペースに形を与えるという「ポシェ」の考え方はその一つだ。小さな本ながら、熟読玩味に値する本といっていい。
    ◇
おざわ・あきら 1936年生まれ。建築家、東北芸術工科大名誉教授。著書に『都市の住まいの二都物語』など。


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