作家の原田マハさんが、岡山県を舞台に小説『晴ればれ、岡山ものがたり』を書き上げた。JRグループなどが手がける岡山デスティネーションキャンペーンの一環で、岡山市内、奥津温泉郷、倉敷、高梁市のそれぞれに、それぞれの思いを抱えた主人公が大切な人と連れだって旅に出る4つの掌編だ。

岡山で青春を過ごした作家ならではの筆致

 岡山市内を舞台にした「緑風に誘われて」では、大阪で働きながら一人暮らしをする千夏が、大学時代の親友・晴香の誘いで久しぶりの旅に出る。

 卒業直後は頻繁にやりとりがあった二人の間にも、20年近くが経ち、少し距離が生まれていた。晴香が千夏を連れて行ったのは、お気に入りのカフェ。優しい雰囲気の店主・山岡との親しさからすると、どうやら何度も訪れているようだ。その山岡が、岡山市内のおすすめスポットを教えてくれる。

岡山城(提供:岡山後楽園)

 コンパクトにまとまった街なかは、ぶらぶら歩きにちょうどいいスケール感。いちばんのお勧めは、城下あたりから鶴見橋へ歩いていって、旭川のさわやかな川風を感じながら、後楽園を訪れる。今の季節はまぶしい緑の唯心山がことのほか清々しい。岡山城の勇姿を眺めながら月見橋を渡って、旭川おしろみちをそぞろ歩いて戻ってくる。

 まさに絶好の散歩コース。行ってみたい! という気持ちになる。小説をすべて読むころには、3人の物語が重なり、この散歩コースはいっそう輝きを増してくる。

 原田さんにとって、岡山は小学6年生から高校卒業までを過ごした思い出の地。それだけに、小説のなかに登場する場所の描き方には実感がこもっているのだろう。

 じつは現地に行った人だけは、その創作の秘密を垣間見ることができる。
 というのも、今回のキャンペーンでは、現地の対象スポットに行ってスタンプを集めると、原田マハさんが語る「執筆後記」を聞くことができるのだ。

 特別に少しだけ内容をご紹介すると、鶴見橋は、原田さん自身が高校生の頃によく訪れた場所だという。当時について、原田さんは橋の上にたたずんで「夢想」したことについて振り返っている。現地で「執筆後記」を聞きながら歩けば、まるで、原田さんと一緒に記憶の旅に出ているような体験が味わえるはずだ。

鍵をにぎる大原美術館の名画

 原田さんといえば、美術との関わりも外せない。森ビル森美術館設立準備室やニューヨーク近代美術館勤務を経験し、フリーのキュレーターとして活動。『楽園のカンヴァス』など、美術を題材にした小説も多い。
 岡山県で美術といえば、倉敷市の大原美術館だろう。もちろん、少女時代の原田さんにとっても強烈な印象を残した。「執筆後記」では「どこを切っても名画だらけの館内を『美の遊園地』で遊ぶようにして、いつまでも見て回ったことを覚えています」と振り返っている。
 倉敷が舞台の「ふたつでひとつ」では、ふとしたことですれ違った大学生の恋人同士の仲直りの旅が描かれるのだが、二人の行方の鍵を握るのは、大原美術館に飾られたある名画だ。

大原美術館(提供:大原美術館)

 「おれさ。絵とかわかんないけど、これを初めて見たとき、いつかまたここへ帰ってこようって思ったんだ。これを見せたいって思えるくらい、大切な人を連れて」
 私は、息を止めてその絵に見入った。そこにあるのはただいちまいの絵。ここにいるのは彼と私の二人きり。ただそれだけなのに、胸がいっぱいで、涙が込み上げた。

 原田さんならではの美術への深い造詣と繊細な筆致で、物語に引き込まれる。数ある名画のなかでふたりを「ひとつ」にしたのはどのいちまいだろうか。ぜひ、小説を読み、現地で見て、その力を確かめてみてほしい。

 小説を読めば、素敵な物語が生まれた場所を訪れたくなるはずだ。そして、岡山でその舞台をたどれば、きっとあなたの読書体験はさらに特別なものになる。
 物語の小説の全文が読める特設サイトはから。

岡山デスティネーションキャンペーン開催中

 岡山デスティネーションキャンペーン推進協議会とJR グループでは、7月から9月まで岡山デスティネーションキャンペーン(岡山DC)を開催中です。

 原田マハさんが書き下ろした小説『晴ればれ、岡山ものがたり』の舞台・岡山をめぐるチェックインラリーも楽しめます。コースは4つあり、対象スポットに行ってスタンプを集めると、原田マハさんが語る「執筆後記」を聞くことができるほか、各コース全てのスタンプを集めると、JR西日本×中条あやみさんコラボレーションマスキングテープを全員にプレゼント。さらに抽選でDISCOVER WEST mall イチオシの岡山県の素敵な特産品が当たります。
 詳しくは、をご覧ください。