お話を聞いた⼈青崎有吾(あおさき・ゆうご)

1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。在学中の2012年『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。著作は他に、〈裏染天馬〉シリーズの『水族館の殺人』『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』『図書館の殺人』、〈アンデッドガール・マーダーファルス〉シリーズ、〈ノッキンオン・ロックドドア〉シリーズ、『早朝始発の殺風景』『11文字の檻 青崎有吾短編集成』がある。23年夏には「アンデッドガール・マーダーファルス」がTVアニメ化、「ノッキンオン・ロックドドア」がTVドラマ化され話題となった。「週刊ヤングジャンプ」にて連載中の『ガス灯野良犬探偵団』(漫画:松原利光)の原作も担当。

「スーパーインドア」な少年

――いちばん古い読書の記憶を教えてください。

青崎:ハマっていたものでいうと、たぶんいちばん古い記憶は『ゲゲゲの鬼太郎』です。幼稚園の年長の頃に4回目のアニメ化作品が放送されていました。『地獄先生ぬ〜べ〜』も見ていて、その流れで妖怪好きになったんだと思います。鬼太郎の絵本とか、『鬼太郎ひみつ大百科』や『少年少女版 日本妖怪図鑑』、児童向けの妖怪の本もいっぱい読んでいました。戦隊ものの格好いいヒーローもいたのに、なぜか自分は鬼太郎が刺さったようで、当時の自由帳をめくると顔の片側が真っ黒な棒人間ばかり描かれていたりします。顔が髪で隠れた鬼太郎です。

 それと並行して、シルバニアハウスとかリカちゃんハウスが好きでした。人形には全然興味がなくて、ドールハウスそのものや家具や小物に興味があったらしくて。ミニチュアに惹かれていたんですね。それを買ってもらって、鬼太郎の指人形を使って一人でごっこ遊びをしていました。

――ごきょうだいはいらっしゃるのですか。

青崎:二つ離れた弟がいて、弟とも遊んではいたんですけれど、一人で勝手にごっこ遊びをしていた記憶のほうが強いですね。

 他にも細かいものや図解ものが好きで、「てれびくん」などの雑誌にウルトラマンの怪獣の断面図や戦隊ヒーローの巨大ロボの内部図解が載っていたので、よく眺めていたおぼえがあります。『輪切り図鑑』のシリーズを図書館で何回も借りては、船やお城の断面図も眺めていました。

――外で遊ぶタイプではなかったのですか。

青崎:スーパーインドアボーイだったと思います(笑)。外でも遊びましたけれど、みんなに「一緒に何かやろう」と言われても「僕一人で遊ぶから」と言って一人でごっこ遊びをしていました。自分でヒーロー役と悪役の一人二役をやったりして。

 字が読めるようになってからは、絵本以外も読み始めました。流行っていた『おしいれのぼうけん』や、寺村輝夫さんの『ぼくは王さま』、『わかったさん』『かいぞくポケット』のシリーズを。それと、『こちらマガーク探偵団』のシリーズが好きでした。この「作家の読書道」の連載で今村昌弘さんも読んでいたと知ってびっくりしたんですけれど。あとはリンドグレーンの『名探偵カッレくん』や、岩崎書店版の児童向けの「シャーロック・ホームズ」シリーズも小学校低学年くらいで読んだ覚えがあります。

――「マガーク少年探偵団」のシリーズはこの連載でインタビューした時に万城目学さんも挙げてらして、万城目さん、裏表紙に載っていた探偵団の歌を暗唱されていたんですよ。

青崎:あ、僕も歌えますよ。「ボンボコマガーク探偵団 ペンペコ仲良し五人組 ブンチャチャ難問即解決 鼻のウイリー 記録のジョーイ......(以後すべて歌う)」

――憶えているんですか、すごい!(笑)

青崎:小学生の頃、勝手にメロディをつけてずっと歌ってたので。あのシリーズはちゃんと殺人事件も起きるし、「これは何か他の本とは違うぞ」という面白さがあるんですよね。小2のときにポプラ社版の江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズも読み始め、その頃からミステリっていいかも、という気持ちの芽生えがあった気がします。

――漫画やアニメは好きでしたか。

青崎:高校生までは漫画家志望だったので、漫画のほうが好きでした。でも最初から家にあったコミックスは『ちびまる子ちゃん』と『ドラえもん』が数冊ずつだけだったので、古本屋で少しずつ漫画を集めていました。世代的に直撃したのは『ONE PIECE』ですね。僕が小1くらいの頃に連載が始まったのかな。最初は漫画を知らず、アニメの第1話を見たんです。オープニングでルフィの腕が伸びた瞬間に、子供ながらに「なんてすごいアニメが始まったんだ」と思い、コミックスも読むようになりました。田舎の祖父がお菓子やお米を送ってくれる時に、新刊を同封してくれていたんです。たぶん、僕が祖父にねだって「じゃあ送ってあげるね」ということで始まったと思うんですけれど。最初はそのシステムでよかったんですが、学年が上がるにつれ、書店で新刊が出たことが分かるようになるし、お小遣いでも買えるようになるので、もうじれったくて。新刊が出てから祖父が送ってくれるまでに2週間くらいタイムラグがあるし、たまに買い忘れたりもされる(笑)。なので荷物が届いてから開けるまで、「新刊が入っているか、いないか」とギャンブル気分でした。お菓子の下から新刊が出てくると嬉しかったですね。

児童向け海外ファンタジーにハマる

――どういう環境で育ったのでしょう。書店などは近所にあったのですか。

青崎:二俣川という横浜の端のほうの町で、近所に書店もありました。ただ、小学校低学年の頃はお小遣いもそんなにないし、親にねだって本を買ってもらうみたいな習慣もなかったので、もっぱら図書館を利用していました。

 小3の頃に「夢水清志郎シリーズ」に出会ってはやみねかおるさんのファンになっていた一方、「ハリー・ポッター」のブームがきたんです。僕も読みたくて、はじめて親に「ハリー・ポッターの本を買ってほしい」と頼みました。親が書店に探しに行ったら1、2巻が売り切れで、第3巻の『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』しかなくて。しかたなく第3巻から読み始めました。売り切れになるくらい人気って、今考えるとすごいことですよね。

「ハリー・ポッター」が社会現象になったことで、児童向けの海外ファンタジーの流れがきて、書店にいろんな作品が並ぶようになったんですよね。児童向け雑誌にも海外ファンタジーの広告が結構出ていたと思います。それで自分も、それらを中心に読むようになりました。

 やはり『ハリー・ポッター』と『ダレン・シャン』のシリーズが二大巨頭で、僕もそうでしたが、だいたいオタクは『ダレン・シャン』のほうにいきますよね(笑)。でもいちばん好きだったのは、『ハウルの動く城』の原作者でもあるダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品です。翻訳されたものはほとんど読みました。特に好きだったのが、『大魔法使いクレストマンシー』のシリーズ。他にはエミリー・ロッダの『リンの谷のローワン』や、ジョナサン・ストラウドの『バーティミアス』シリーズ、メアリ・ホフマンの『ストラヴァガンザ』という現実と異世界を行き来するシリーズとか。あと、これは他のエッセイなどでも挙げているんですが、ポール・スチュワートの『崖(がい)の国物語』が好きでした。

――ファンタジーもいろいろですが、ご自身ではどんなファンタジーが好きだったと思いますか。

青崎:当時は全然気にしていなかったんですけれど、思い返すとハイファンタジーよりは現実世界にファンタジーが溶け込んでいるもののほうが好きでした。ダイアナ・ウィン・ジョーンズがわりとそういう作風なんです。だからか、『指輪物語』はそんなにハマらなかったですね。

 その頃から、魔法で何でもできるのは理不尽だと思っていたんです。『崖の国物語』が自分にハマったのは、魔法が出てこないというところですね。特殊な鉱物とかは出てくるんですけれど、物理法則がきっちり定められていて、それを利用した文明が発達していて......という世界観が好きでした。

 高学年の頃は、ミヒャエル・エンデやラルフ・イーザウ、セルジュ・ブリュソロの『ペギー・スー』というグロめのファンタジー、上橋菜穂子さんの『守り人』シリーズや柴田勝茂さんを読んでいました。それと、印象に残っているのは坂東眞砂子さんの『メトロ・ゴーラウンド』。これは主人公が近未来都市風の世界に迷い込む話で、ジャンル的にはSFですが、強烈に憶えています。あと、後藤みわこさんの『あした地球がおわる』。こちらは世界滅亡後に生き残ってしまった少年少女の関係性を描いた、ディストピア青春小説でした。

 また、その頃に講談社の「YA!ENTERTAINMENT」というレーベルの作品が面白いぞと気づき、よく読んでいました。はやみねかおるさんの『都会のトム&ソーヤ』とか、あさのあつこさんの『NO.6』とか、香月日輪さんの『妖怪アパートの幽雅な日常』とか。

――いろいろ読まれていますが、友達と本の話もよくしていたのですか。

青崎:漫画好きやイラスト好きの友達はいたんですけれど、本の話ができる友達は全然いなくて。教室内で「あ、あいつも『崖の国物語』読んでるな」とか気づくことはあったんですけど、そいつとも他のことなら話せるのに、本の話はしなかったんですよね。なんか、「本について語らう」という概念が当時の自分の中にはなくて、本は一人で勝手に読むものだと思っていました。

――自分でお話を作ったりは。

青崎:主に漫画を描いていました。小3から小5にかけて、同じく漫画を描くのが好きな友達と、教室の壁の空きスペースに勝手に漫画を貼っていました。上に重ねる形で画鋲で留めて連載していて、先生も何も言わなかったので100話分くらいまで続けていました。その頃ポケモンが流行っていたので、僕はそれをパクったような話を描いていましたね。悔しいことに、友達のほうがめちゃめちゃ絵も話づくりもうまかったっていう。

 小4の頃からは家で自家製コミックスを作るというのを始めまして。A4のコピー用紙を真ん中で切って4ページ分にして、裏表に漫画を描き、8ページで1話分、それが5話たまったら糊で張り付けて、40ページの単行本にするという。暇な時にコツコツ鉛筆で描いて、中学生の終わりくらいまでに140冊くらい作りました。

――内容は続きものなんですか。

青崎:20冊くらい続けると飽きるので、全然違う話に変えていました。最初はアラレちゃんを真似したみたいな話を描き、次は『シャーマンキング』みたいな話を書き、その次は『ドラゴンボール』みたいな話にして、夏休みに「SLAM DUNK」の再放送を見たら、自分の漫画でもいきなりバスケ編が始まったり...。そんな自家製漫画を弟にだけ読ませていました。今もとってはありますが、人に見せることは考えてないです。僕が死んだら燃やしてくれ、という。

 でも、絵はぜんぜん上達しなかったので、それで漫画家は諦めることになります。

――小説は書いていませんでしたか。

青崎:小5の頃、自由帳に書いていて、一冊使って完結させました。こちらは「マガーク探偵団」の影響が強くて、架空の町の子供たちが探偵団を作って泥棒を捕まえる、みたいなミステリ仕立ての話でした。

――国語の授業は好きでしたか。

青崎:そんなに意識はしていませんでしたけれど、好きは好きでした。でも作文は嫌いで、楽しくやっていた記憶はないです。読書感想文も親に手伝ってもらっていて、一度、『名犬ラッシー』の感想文を7割くらい親に手伝ってもらって出したら、何かのコンテストに出すかもしれないという話になって。どうしよう、棄権しようかなと思っているうちに結局出さずに終わったのでほっとしました。

――課題として文章を書くのが嫌だったのでしょうか。

青崎:たぶん、お話を作るのは好きだけれど、「自分のことを書きましょう」というのが苦手だったのかなと思います。今でもそうですけれど。

中学時代に影響を受けたもの

――中学校時代の読書はいかがでしたか。

青崎:読書の主流は児童向け海外ファンタジーでしたが、大人向けのものも読むようになり、筒井康隆さんや星新一さん、ミステリだと有栖川有栖さんや綾辻行人さん、芦辺拓さんや恩田陸さんを読み始めました。

 筒井さんはもう、片っ端から読みました。最初は『敵』を読んだのかな? それから『虚航船団』とか『銀齢の果て』とか『歌と饒舌の戦記』とか『心狸学 社怪学』とか...。ドタバタもののほうが好きでしたね。恩田陸さんは『ドミノ』ですね。いろんなことが連鎖的に起きる物語で、すごく印象に残っています。

 中学生のときってメフィスト系の話題作がどんどん出ていた頃だったと思うんですけれど、僕は主に図書館で本を借りて読んでいたから、新刊は貸し出されていて、ないんです。なので京極夏彦さんや森博嗣さんを読めなくて。名前だけはたくさん聞くから、いつか読みたいなという憧れの枠でした。

 他には浦沢直樹さんの漫画にハマっていました。『20世紀少年』、『MASTERキートン』、『MONSTER』とか。浦沢さんからは実作にも影響を受けていますね。浦沢作品はだいたい、人間は外側から作られる、というスタンスなんです。カリスマ的な人も殺人犯も、もともと持って生まれた素質ではなく、外的環境で変わっていった、という。僕もそういうスタンスで書いていると思います。

――部活は何かやっていましたか。

青崎:卓球部でしたが真面目にやっていなくて、サボって家に帰って漫画を読んだり、友達と「こち亀」(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)の話ばかりしてました(笑)。当時1〜100巻あたりを何度も読んでいたんですけれど、同じくらい読み込んでる友達がいて、そいつと「こち亀」のマニアックな話を無限にできたんです。

 映像ものでは、三谷幸喜さんにハマっていました。三谷さんは前から「古畑任三郎」で知っていたんですが、映画の「笑の大学」と「THE 有頂天ホテル」を観て、それがすごく好きで。当時の僕は、ひとつの場所でいろんなことが同時に起きるドタバタ系ストーリーばかり考えていたんですけれど、それはたぶん「THE 有頂天ホテル」や恩田さんの『ドミノ』の影響です。

――影響といえば、「笑の大学」は検閲官と劇作家が取調室で会話するワンシチュエーションものですよね。青崎さんの『早朝始発の殺風景』は高校生たちのワンシチュエーションものの短篇集ですが、もしかして。

青崎:はい。あの短篇集も「笑の大学」からものすごく影響を受けています。

――他にゲームなど夢中になったものはありましたか。

青崎:それが、平成生まれなのに全然ゲームをやっていないんですよね。自分の中の欠落している部分だなと思います。嫌いだったわけでもないし、親が厳しかったわけでもないんですが、単純に操作が下手だったというのと、レベル上げのための作業を続ける根気がなかったからです。ポケモンを少しやったのと、友達のお兄さんが中古のスーパーファミコンをくれたので「ドンキーコング」をやったくらい。「ドラクエ」や「ファイナルファンタジー」を通っていないんですよ。今はWEB小説系で異世界転生ものがジャンルとして定着していますけれど、あれって勇者パーティやダンジョンといったRPG的な世界観を前提に書かれていることが多くて、僕はそこの「あるある」がいまいち共有できないので、楽しみきれていないんです。もったいない気がしています。

ミステリの流れが到来

――高校時代の読書はいかがですか。

青崎:ようやくミステリの流れが来ます。アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』を読んだことで、ミステリってものすごく面白いのかもしれないぞ、と興味が加速したんです。

 そこからミステリばかり読み始めるんですが、やっぱり図書館ユーザーだったので、海外の古典作品から入りました。古典はずっと貸し出中ということもなくて、借りやすかったんです。エラリー・クイーン、ディクスン・カーといった黄金期の作家を読んで、特に好きになったのがクイーンでした。

――青崎さんはデビュー後「平成のエラリー・クイーン」と呼ばれるようになりますよね。

青崎:もう平成も終わったのでその名称は消えましたけれど...(笑)。クイーンを読んで、あ、自分が一番好きなのは「解決までの道筋」なんだな、と気づきました。さきほど言った外的環境の影響ですよね。クイーンを読んだことによって、ロジック好きにさせられるという。「憧れ」枠に入っていた新本格の作家さんたちもこのころから読み始めました。

 それと、高校でようやく小説についての情報交換ができる友達が何人かできたんです。ミステリ好きが一人いて、クイーンを手に取ったのもその友達がきっかけでした。いろいろ情報交換する中で東野圭吾さんや、倉阪鬼一郎さんの作品をよく読んでましたし、夢野久作さんの『ドグラ・マグラ』から始まる四大奇書にも手を出したり。はやみねかおるさんの『都会のトム&ソーヤ』にパロディとして「四大ゲーム」が出てくるんですが、元ネタのタイトルよりも「四大ゲーム」のほうを先に知っていましたね。そうやって下地が作られ、一か所決壊したら一気にミステリ好きになるという、はやみねさんにまんまと乗せられた感じでした(笑)。

――ふと思ったのですが、漫画の『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』は通ってこなかったのですか。

青崎:それも自分の欠落している部分で、通っていないんです。『コナン』も『金田一』も同世代だと全巻読んだという人も多いんですけど、自分はアニメを観ていた程度で。その頃はバトル漫画のほうが好きで、あまり漫画にミステリを求めていなかったのかもしれません。福本伸行さんの漫画『賭博黙示録カイジ』や甲斐谷忍さんの『LIAR GAME』といったギャンブル漫画はよく読んでいたので、トリックよりもロジックが読みたい、という気持ちもあったのかも。

 欠落でいうと、ラノベの名作も押さえていないんです。これも図書館で常に貸し出し中だったからなんですが。その頃に上遠野浩平さんとかを読んでいたらドハマリしていたかもしれませんが、読んだのは大学に入ってからでした。いろいろ取りこぼしながら大人になってしまいまいました。

 でも、ものすごく好きなラノベのシリーズもあって。入間人間さんの『安達としまむら』ですね。2人の女子高生がいて、片方が片方に恋してしまうというお話なんですけど。その前から百合作品は好きでしたが、『安達としまむら』を読んだことでより深みにはまったかもしれません。入間先生ってもともと心理描写が巧みな方なので、百合とすごく相性がいいんですよ。最近シリーズが一段落して、完璧としか言いようのない終わり方をしました。

――バトル漫画で夢中になったものは。

青崎:大暮維人さんの『エア・ギア』ですね。なんと、後に『アンデッドガール・マーダーファルス』の表紙を描いていただくことになります。宇宙一絵が上手い人だと思います。

 同世代なら分かると思うんですけれど、中高生くらいで『エア・ギア』を読むと、虜になりますよね。外連味のある科学漫画というか。たとえば炎を操るキャラクターが出てきたとしても、超能力で炎を出しているわけではなく、こういうツールや現象があって、それを利用して発火している、という解説が一応あるんです。理屈を通そうとする作風がすごく好きで、しかも超絶画力のせいで謎の説得力がある。自分の中で魔法万能系の物語が肌に合わなかった部分と合致して、現実世界でも面白いことはできるんだと思えました。もしかするとそこがきっかけで、ファンタジーよりもミステリが好きになっていったのかもしれません。大暮維人先生に人生を変えられました。

――創作はしていましたか。

青崎:絵が上達しないので漫画家になるのを諦め、じゃあ小説家になろうと思ってノートにミステリを書いていました。『短編小説』というタイトルの長編小説で、ある高校で殺人事件が起きるんですが、古い雑誌に載っていた短編小説と手口がそっくりなことに文芸部の生徒たちが気づいて、作者について調べ始め......みたいなお話でした。刑事の視点や犯人側の視点もあったりして、今の作風より硬派だったかもしれません。これも母と近所の人に読んでもらっただけで、封印してます。

大学のミス研で読書の幅が広がる

――明治大学に進学してミステリ研究会に入られたそうですね。最初から入ると決めていたのですか。

青崎:入試より前、パンフレットのサークル一覧にミス研を見つけて、明治に行くことになったらここに入ろうと決めていました。ところが新歓の時、どれだけ探してもミス研がいない。webサイトにだけ活動場所が書かれていたので「大丈夫かな」と思いつつ覗きに行ったら、こっそりやっていたという。当時の先輩たちが、面倒くさがって新歓をしていなかったんです。

 週1回程度の読書会が主な活動だったんですが、そこで課題本を無理矢理読まされたのは大きかったですね。司会になった人の趣味を押しつけられるので、いろんな本に触れる機会が増えました。今好きな作家さんは、読書会をきっかけに読むようになった人ばかりです。

 泡坂妻夫さん、舞城王太郎さん、桜庭一樹さん、北山猛邦さん、ロアルド・ダール、エドマンド・クリスピン、エドワード・D・ホックとか...。最初の読書会の課題本は米澤穂信さんの『ボトルネック』でしたね。当時は梓崎優さんが話題をさらってましたし、似鳥鶏さん、相沢沙呼さんもライト文芸の書き手として人気が高かった。広義のミステリならなんでも良かったので、ピエール・シニアック『ウサギ料理は殺しの味』やマイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』、赤染晶子さんの『乙女の密告』でも読書会をやりました。そこでどっとミステリに染まったんですが、体系だった読み方はしていませんでした。しいていうなら有栖川有栖さんの『密室大図鑑』に載っている作品を一個ずつ潰していこうとして、途中で挫折したくらいで。

 それと、入会した時に「クイーンが好きです」と言ってしまったので、「じゃあ、パズラーの話になったらこいつに振ろう」みたいな空気ができてしまって。これも外側から作られるというやつで、パズラー好きが加速しました。氷川透さんや、結城昌治さんを読んでいました。なんか、アイドルオタクの担当文化みたいなものが自然とできていたんですよ。西澤保彦さんの話はこの人に振ろうとか、ハードボイルドのことならこの先輩に聞こう、みたいな。

 創元系のコージーミステリや日常の謎が好きな先輩がいて、その人とダベっていたせいで、僕も創元推理文庫びいきになっていきました。北村薫さん、若竹七海さん、倉知淳さんなどもよく読むようになりました。

――サークルで創作はしていたのですか。

青崎:基本、読み専のサークルだったんですけれど、4人くらい創作もしたい人がいて、サークル内サークルの形で創作誌を作って文学フリマで売ったりしていました。

――大学での専攻は。

青崎:文学部の演劇学専攻というところに籍を置いていました。演劇系の座学が多くて、戯曲などを読む割合が多かったです。チェーホフなんかを読んでいました。

――なぜ演劇を?

青崎:高校3年生の時って一番人生をぶん投げていた時期だったので、どうでもいいやと思って(笑)。文芸メディア専攻という創作用のコースもあったんですけれど、小説は家でも書けるし、演劇のことは全然知らないから学んでおこうかなと思ったんです。

――創作に関わることだから、という気持ちもあったのでは。

青崎:大いにありましたね。それで入ってみたらまわりに演劇系サークルの人しかいなくて、僕は孤立してしまうという。でも実になるものはいっぱいあったと思います。やはり『早朝始発の殺風景』は演劇っぽいシチュエーションものだし、デビュー作の『体育館の殺人』も序盤が演劇っぽいと言われるんです。体育館から場所が動かなくて、人が出たり入ったりしている状況ですから。

――大学時代、新人賞への投稿もしていたわけですよね。

青崎:大学に入ってから投稿していました。ライトミステリを書きたかったので、「じゃあラノベの賞かな」と、ラノベをろくに読んでいないのに電撃大賞とかに送るという馬鹿なことをやっていました。

――あ、クイーンのようなものを書こう、という方向性ではなかったのですか。

青崎:自分の中にふたつ軸があって、クイーンが好きだというラインと、学園ミステリのような日常系が好きというラインが並走していたんです。両方混ぜたものを書きたいという意識は当初からありました。

――デビューしたのは東京創元社の鮎川哲也賞ですよね。在学中の2012年に『体育館の殺人』で受賞されている。

青崎:さっき話した日常の謎好きの先輩が、僕のひとつ前の鮎川賞で最終選考に残ったんですよ。ほぼほぼ9割くらい、その影響で応募しました。

――『体育館の殺人』では、高校の体育館で放送部部長が何者かに刺殺される。密室状態で起きたこの事件の謎を、校内に住み込んでいるアニメオタクの生徒にして学内随一の天才、裏染天馬が解き明かします。これはライトノベルの賞に応募していた作品とはかなりテイストが違うのですか。

青崎:『体育館の殺人』のほうが本格度は上がっていますけど、ラノベの賞に出したものも校内で殺人事件が起きて、生徒が謎を解くという内容だったので、そんなに大きな違いはないかもしれません。

――作中にアニメのタイトル等も沢山出てきますよね。アニメオタクの探偵という設定にしたのは...。

青崎:あれは本当に場当たり的というか...。学校に住んでいるという設定が先にあったので、バレないのは引きこもりがちだからだろう、ならアニメとか好きかな、というくらいの発想です。僕自身アニメも好きですがそこまで詳しくないので、「ここに何かアニメネタを入れたいけれどちょうどいいタイトルはなんだろう」と思った時は友達に訊いたりしていました。

――その時の選考委員ってどなたでしったっけ。

青崎:芦辺拓先生と辻真先先生と北村薫先生です。芦辺先生と辻先生がアニメネタを許してくれる方だったからデビューできたんじゃないか、と先輩には分析されています。

 ちなみに、僕の前に最終選考に残っていた先輩は結局鮎川賞は獲らなかったんですけれど、ちょっと前にtwitterで「ない本」というアカウントを作って、めちゃめちゃバズって1年くらい前に『ない本、あります。』というタイトルで書籍化しました。

――え、画像を送るとそれを表紙にしてあらすじも作ってくれる、あの「ない本」のアカウントの方なんですか。

青崎:そうなんです。昔から面白いことばかりしている人でした。読書の話に戻すと、全然ミステリの下地ができていない状態でデビューしてしまったので、あれも読まなきゃこれも読まなきゃみたいなプレッシャーがありました。「大坪砂男は読んでるくせに山風は読んでねえ!」となって、慌てて買い集めたりとか。

――学校生活を送りながら、新作を書きながら、ですよね。ところで『体育館の殺人』を書いた時はシリーズ化するって思ってました?

青崎:思ってなかったです。シリーズ化しましょうとなって、タイトルに「館」がついているから次も「館」にせざるを得ないだろうと考え、2作目の『水族館の殺人』と並行してシリーズとしての縦軸を作っていきました。破綻生活を送っている今振り返ると、たしかに大学に通いながら2作目を書いていたなんて信じられない...。

――サークルで「デビューしたなんてすごい!」などと言われたのではないですか。

青崎:それはよくある誤解でして。ミステリ研でデビューした奴って、扱いがいちばん下になるんです。作家は批評される側の人間だから。全然地位は向上しませんでした。

――『体育館の殺人』の読書会とかあったんですか。

青崎:ありました。ボロクソに言われました。『水族館の殺人』が出たときも読書会をしたんですけれど、こっちはもう何が起きるか分かっているから、鋏を持ち込んで、自分の手首に刃を当てて「さあ語れ、少しでもつらくなったら俺は切るぞ」と脅したので、みんな「すごく面白かったよ」って言ってくれました。まあ、だいたいミス研の人は僕も含めて、いいところより悪いところを見つけたがるんですよ。そういう厳しい目があったほうが成長できるんじゃないかとも思います。

デビュー後の読書生活

――卒業後は専業になったのですか。

青崎:最初から専業しか考えていませんでした。親にもゼミの教授にも反対はされなくて。東京創元社の担当編集者さんには「一応就活もしておいたほうがいいよ」と言われていたんですが、僕は「してますから安心してください」と半年くらい嘘をつき続けていました。4年生の時に『水族館の殺人』を書き、3作目の短篇集『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』を出したあたりで専業になりました。

――読書生活に変化はありましたか。

青崎:なんか、言い訳みたいになってしまうんですけれど、デビューして2、3年経ってから、自分は評論家ではないんだし、アカデミックな読み方はしなくてもいいんじゃないかと思い始めて。話題の新刊は絶対読むとか、未読の名作をつぶしていくというような縛りはやめて、気が向いた時に読みたいものを読むくらいでいいかな、と思うようになりました。仕事柄、優先して読まなきゃいけないものはどうしても出てきますが、それは押さえつつ、もうちょっとわがままな読書でいいかなって。

――読むのはミステリ中心ですか。

青崎:そうですけど、ノンフィクションの割合も増えてますね。最近だとマイケル・フィンケルという人の著書で、古屋美登里さん訳の『美術泥棒』が面白かったです。ヨーロッパ中の美術館から200点以上の美術品を盗み、しかも売らずにコレクションしていたという実在のカップルの話です。普通に美術館に入って普通に盗って、服の下とかに隠して出ていくっていう大胆な手口なんです。

――読書の記録はつけていますか。

青崎:つけている時期とつけていない時期がありました。ここ2年くらいはつけています。タイトルと、作者名と、面白かったら横に〇印を書くくらい。(スマホの記録を見ながら)最近〇がついているのはその『美術泥棒』と、文庫化された泡坂妻夫さんの短篇集『蔭桔梗』。そのなかの「竜田川」と「くれまどう」という短篇が特に気に入ったので、タイトルが横に書いてありますね。『ガラスの橋 ロバート・アーサー自選傑作集』や、佐藤究さんの『幽玄F』にも〇がついています。

――読む本は刊行時期やジャンルも偏ってない感じですか。

青崎:そうですね。最近出た国内小説を1冊読んだら、積読を漁ってずっと前に出たものを1冊読み、今度は翻訳ものの新刊を...という感じで。

 ジャンルはどうしてもミステリ・SFに偏りがちですが、最近、似鳥鶏さんから「文藝賞は全部面白い」という話を聞いて、受賞作を集めています。日上秀之さんの『はんぷくするもの』とか、李龍徳さんの『死にたくなったら電話して』とか。あと、去年は『増大派に告ぐ』を読んで、小田雅久仁さんの面白さを知りました。

――『増大派に告ぐ』は結構前の作品ですね。日本ファンタジーノベル大賞受賞のデビュー作です。団地に住む少年とホームレスの男の、非常に不穏な話です。

青崎:ずっと絶版なんですよ。あらすじを読んで何年も前から気になっていたので、読めたときの感動もひとしおでした。

――1日のタイムテーブルって決まっているんですか。

青崎:完全に夜型です。昼に起きて、レンタル自習室を仕事場として借りているのでそこに行って仕事をして、進捗がいい時は自習室が閉まる時間の22時に帰るけれど、悪い時はその後ファミレスに行って深夜まで続きをします。本も家の外で、喫茶店などで読みますね。家に帰ったらもう寝るかインターネットを見るか、みたいな。起きたら夕方という日もあって本当によくないなと思っています。起きてSNSを開くと綾辻行人先生が「起動」ってつぶやいていて、綾辻先生とそこだけは被っているのが嬉しいんですけれど(笑)。でも、今年の目標は「規則正しい生活」ですね......。

――さきほど三谷さんの映画の話も出てきましたが、好きな映画や映像作品ってありますか。

青崎:昔からアクション映画が好きですね。爆発とか銃撃戦メインではなく、近接戦を見せてくれるような作品が。

「ザ・レイド」というインドネシアの映画は、どうやって撮影したんだろうというくらい真に迫っていてお気に入りです。最近だと「ジョン・ウィック」シリーズとか。子供の頃に観たジャッキー・チェンの映画が源流にあって、そのあたりが『アンデッドガール・マーダーファルス』に繋がっているのかなと。

――『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズは19世紀、吸血鬼や人狼などがいる世界を舞台にしたミステリ&冒険伝奇ものですよね。

青崎:あれはデビュー前から構想がありました。漫画でいうと『ドリフターズ』や『HELLSING』の作者、平野耕太さんの作品の影響があります。パスティーシュの面でいうと、芦辺拓さんの『名探偵博覧会 真説ルパン対ホームズ』などを意識して、クロスオーバーものをやりたい、という気持ちがありました。キム・ニューマンの『ドラキュラ起元』が元ネタじゃないかとよく言われるんですけれど、僕が高校生の時はもう絶版で手に入らなかったので、実は未読だったんです。復刊してからやっと読みました。

――つい先日別のインタビューでお会いした時、迫稔雄さんのギャンブル&バトルアクション漫画『嘘喰い』のアクション部分が『アンデッドガール・マーダーファルス』に、ロジック部分が最新刊『地雷グリコ』に影響を与えているとおっしゃっていましたね。

青崎:ああ、『嘘喰い』の話をしていませんでしたが、あれも高校生の頃に読み始めました。その時点ですでに10巻くらい出ていましたが一瞬で追いつきました。ギャンブル漫画の中でもとりわけミステリマインドを感じたんですよね。大学のミス研でも新刊が出るたびに『嘘喰い』の話で盛り上がっていました。

――先日青崎さんからその話を聞いて3巻くらいまで読んだところなんですが、まだバトル要素が強くて。

青崎:それくらいだとまだ「全然ギャンブルじゃないじゃん」って思いますよね。でも10巻くらいまで読み進めると、「バトルもギャンブルのひとつの要素なんだ」と思えるようになってくるんですよ。

『嘘喰い』のようなバトルものや『キングダム』みたいな戦記ものもそうですけれど、どういう方法で相手を倒すかという部分において、気の利いた作品だとちゃんと伏線が張られていて、逆転のための道筋が作られている。それはミステリの謎解きでいう、論理のアクロバットみたいな部分とも通じていると感じます。何を読むにしても、「その手があったか」という納得感が得られる瞬間が一番楽しいですね。

――ロジカルなものがお好きですよね。ミステリで「読者への挑戦」がある時、ご自身でも謎を解こうとしますか。

青崎:それが、一切やらないんですよ。難しいから(笑)。だからデビュー作の『体育館の殺人』の単行本が出た時、「どうせ誰もやらないでしょ」と思って挑戦状をつけなかったんです。でも「クイーンリスペクトならつけてほしい」という要望もいただいて、文庫版にはしぶしぶつけたんですね。そうしたら、実際に挑戦して外れたとか、当てられた、みたいな感想が結構届いてカルチャーショックでした。世の中捨てたもんじゃないな、僕の心が汚かっただけだなって反省しました(笑)。

 ただ、読者にどの程度考えてもらうのが妥当かは、気にしている部分ではあります。最近、「ナゾ解き」がブームになっていますが、少し危惧を感じるのは、そういうのが好きな人たちって問題を出されるとどうしても、解けるまで考えたくなっちゃうんじゃないかということです。ナゾ解き好きな人たちが裏染シリーズを読んだ時、「読者への挑戦」を見つけたら、強制的に考えさせることになるんじゃないか、と心配しています。それで解ければもちろん嬉しいでしょうけれど、解けなかったら、僕だったらイラっとすると思うんです。作者としては「絶対に挑戦してくださいね」というわけでなくて、「暇で暇でしょうがなかったら、よければやってもいいですよ」くらいの気持ちです。お酒と同じです。飲みたきゃ飲んでいいけれど、飲みたくなけりゃソフトドリンクでいいんですよ、っていう。

話題作『地雷グリコ』と今後の予定

――でも、新刊の『地雷グリコ』はどうやったら勝てるかすごく考えながら読みました。

青崎:確かにあれは「自分だったらどうするか」を考えながら読んだほうが楽しめるかもしれませんね。

――一見ちゃらんぽらんに見えるけれど実は頭脳明晰な高校生、射守矢真兎がさまざまな勝負に挑戦する連作集です。その勝負事というのが、お馴染みの遊びにオリジナルルールを加えたもので、第一話「地雷グリコ」は、文化祭の場所取りを競って、生徒会役員と階段を使うあの「グリコ」で勝負する。お互いに好きな段に地雷を仕込むことができるというルールを加えただけで、ものすごくスリリングな頭脳戦になっていますよね。この「地雷グリコ」はもともとは単発の短篇として書いたそうですが。

青崎:あれは学園もののアンソロジーに収録する前提で、2017年に雑誌に発表したものです。そのアンソロジーの企画は流れてしまったんですが、その後、「続きを書いてください」と依頼があったんです。連作にするとは考えていなかったので、射守矢さんのキャラクターも強い相手とのギャップを狙ってちゃらんぽらんな感じにしただけだったんですけれど。ただ、一話目から設定としてあったのは、射守矢さんは相手の性格や環境に合わせて戦略をカスタマイズするタイプということでした。

――毎回、絶対絶命と思われるところからの逆転劇がたまりませんでした。二話以降では、百人一首で神経衰弱をする「坊主衰弱」、新しい手を加えることができる「自由律ジャンケン」、制限の多い「だるまさんがかぞえた」、複数の部屋を使う「フォールーム・ポーカー」に挑戦する。毎回、射守矢さんは勝負前に審判にいくつかルールを確認する質問をしますよね。それが後になって効いてくるところが、伏線回収のような面白さがありました。確かにギャンブルのような勝負事とミステリの謎解きって密接なんだなと感じました。

青崎:自分の中ではそういうイメージでした。特殊設定ミステリみたいだという感想もありましたね。どのゲームも独自のルールを設定して、そのルールを利用してトリッキーなことをやるので特殊設定ミステリと同じだ、と。なるほどなと思ったりしました。

――射守矢さんと友達の鉱田ちゃんとの友情も心くすぐるものがあるし、ちゃらんぽらん系の射守矢さんがなぜ真剣勝負に挑むのか、その理由にもぐっときます。生徒会役員の椚先輩をはじめ、他のキャラクターもみんな魅力的で。

青崎:よかったです。2017年の自分を褒めてあげたい(笑)。

――「オリジナルゲームを考えるのはそれほど難しくなかった」とおっしゃっていましたね。

青崎:『嘘喰い』や『カイジ』を読みながら、自分でもいろんなゲームを考えていたので、ストックやノウハウめいたものが頭の中にありました。ただ、ギャンブル漫画だと命を懸けた過酷な勝負をするのが定番ですが、『地雷グリコ』に出てくるのは高校生たち。彼らが真剣勝負をする理由とはなんだろう、と悩みながら書きました。

――高校生たちが小さな子供でもできる「グリコ」や「だるまさんがころんだ」をアレンジして真剣にやっているところがいいですよね。

青崎:『嘘喰い』では大人がそういうゲームを真剣にするんですよ。日本全土へのミサイル攻撃を賭けてテロリストとババ抜きをしたりする。

――なんか、青崎さんと『地雷グリコ』について話していると、『嘘喰い』が読みたくなってきます(笑)。

青崎:影響を受けているのはもう隠しようがないので。『地雷グリコ』を読んで『嘘喰い』に興味を持った方はそちらもぜひ、という(笑)。迫稔雄先生は今、「ヤンジャン!」で『バトゥーキ』というカポエイラ漫画を描かれています。迫先生のすごいところは、ご自身でも実際にカポエイラを習得されているんですよ。そちらは完全に格闘漫画ですが、やはり面白いです。

――青崎さんは現在「週刊ヤングジャンプ」で連載中の松原利光さんの『ガス灯野良犬探偵団』の原作を担当されていますよね。あれはどういうきっかけだったのですか。

青崎:ワセミス出身の学生さんが、新卒でヤンジャン編集部に入ったんですよ。もともと僕の小説を読んでくださっていたらしく、「『ヤンジャン』でミステリ漫画をやりませんか」と声をかけていただきました。それで、3年前くらいから打ち合わせをしていたんです。

――19世紀末のロンドンで、浮浪児の少年が諮問探偵シャーロック・ホームズと出会うという話です。小説と漫画の原作では、執筆の際どんな違いがありますか。

青崎:やっぱり台詞量ですね。小説と同じ感覚で書くとまったく入りきらないので、とにかく短く短く切り詰めて、でもちゃんとパワーワードを置かなくてはいけない。もともと漫画を描いていたので、なんとなく分かる部分ではあったんですけれど。

――今後のご予定はといいますと。

青崎:今話した『ガス灯野良犬探偵団』が「週刊ヤングジャンプ」で連載中で、コミックス第1巻が発売中です。それと、以前実業之日本社さんから出た『彼女。百合小説アンソロジー』に「恋澤姉妹」という短篇で参加したんですが、今度その百合アンソロジーの第2弾が出る予定です。僕は「首師」という単発の短篇を書いています。