映画『ジョーカー』が決して哀れな転落物語ではなく、”ハッピーエンド”である理由

 私の名前はダブル手帳( @double_techou )。身体障害者手帳1級(重度脳性麻痺)と精神障害者手帳3級(発達障害)を持っていることから思い付いた安易なペンネームを使って執筆している。生まれつき歩くことができず、背筋は湾曲し、右手も自由にならないため、電動車椅子で生活している。先日、私は大ヒット中の映画『ジョーカー』を見てきた。

*編集部注……この記事はネタバレを含みます。この記事は、記事中の行為を推奨するものではありません。

ジョーカーはコメディー映画だ

 「ジョーカー」は言うまでもなくコメディー映画であるが、その中でもこれだけのハッピーエンドを迎える作品は珍しいと言えるだろう。以下、この映画のあらすじを簡単におさらいしたい。


 主人公アーサーは、脳に障害を持つ貧しい道化師である。年老いた母親を介護しながらの暮らしは決して楽なものではない。おまけに、職場では同僚にからかわれてばかり。しかし、彼にはコメディアンになるという夢がある。「人生の目的は笑いと喜びを届けること」。笑顔を絶やさない彼を母親は「ハッピー」と呼ぶ。

 そんな彼に大きな転機が訪れる。相次ぐヘマによってとうとう解雇の憂き目に遭い、肩を落として道化師姿のまま地下鉄に乗り込んだアーサー。彼はそこで偶然にも、酔っ払いのビジネスマン3人組に絡まれていた女性を思いがけない形で助けることになる。この一件は瞬く間に評判となり、「謎の道化師」は街の困窮者たちにとっての英雄となっていく。

 次第に活力を増していくアーサーに更なるチャンスが訪れる。なんと、アーサーが一念発起してナイトクラブで行った漫才が憧れの司会者マレー・フランクリンの目に留まり、マレーの番組への出演依頼を受けることに。

 アーサーは道化師姿で身を固め、初めて自らを「ジョーカー」と名乗り、完璧な登場で観客を魅了する。つかみはバッチリ。ところが、マレーの意図は、アーサーを貶め、笑い者にすることにあったのだ。次第に会場には不穏な空気が漂い、アーサーはマレーとのやり取りの中で窮地に追い込まれる。しかしアーサーは予想だにしない機転によってマレーを黙らせ、一発逆転を果たすのだった。


『ジョーカー』で主人公アーサーを演じたホアキン・フェニックス ©AFLO

 群衆から熱烈な歓迎を受けるアーサー。彼はおもむろに立ち上がると、ゆっくりと舞い踊る。その一挙手一投足に、人々が熱狂する。彼が「コメディアンになる」という夢を叶えた瞬間だった。

アーサーがこれ以上ハッピーになることは有り得なかった

 この映画全体については、既に多くの考察が為されているが、私から言っておきたいことはたった一点しかない。たった一点ではあるが、極めて重要なことだ。それは、アーサーが仮にどのように本編と違った行動を取ったとしても、本編以上にハッピーになることは決してなかっただろうということ。


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