今季のドラマで、放映中にもっとも衝撃を与えたのは『大豆田とわ子と三人の元夫』だった。

 主役のとわ子を演じるのは松たか子。別れた夫たちは、最初が松田龍平で、次いで角田晃広、岡田将生となる。脚本は坂元裕二だ。

 離婚歴三回。住宅会社の社長になったとわ子は、明るくて負けず嫌いで、優しい。もうすぐ四十一歳だ。

 別れた夫たちが、問題ありか。カメラマンの佐藤鹿太郎(角田晃広)と、弁護士の中村慎森(しんしん/岡田将生)はまだ未練たっぷり。対照的に、奥渋で小さなレストランを営む田中八作(はっさく/松田龍平)だけが、いい距離とって友達づき合いしている。

 実は不満があった。とわ子とは三十年来の親友、綿来(わたらい)かごめを市川実日子が演じている。なのに第三話まで出番が少ないんだよ。

 シスターフッドって言葉をよく目にする。女同士の友情、繋がりか。シスターフッドといったら、市川実日子でしょ。彼女が同僚役だったから、石原さとみの『アンナチュラル』は単なるサスペンスの成功作の域を超えた。黒木華の『凪のお暇』も然り。名ヒロインの隣に市川実日子ありだ。


市川実日子 ©AFLO

 第四話になった途端、かごめを中心にドラマが動いた。とわ子と同じマンションに住む指揮者の独身男性が、かごめをコンサートと食事に誘う。なのに彼女は約束をすっぽかす。

 二人は小学生のときにマンガ家を目指して共作した。周囲と巧く折り合えないまま四十歳になったかごめが、マンガに再挑戦すると明かす。ひと晩でいいから、マンガ描くの手伝わせてと、とわ子は懇願する。

 作業の合間に、かごめが「恋愛はしたくないんだよ」と話す。「私にはただ、ただ、恋愛が邪魔。女と男の関係が面倒臭いの」。

 モテる八作は美人客(石橋静河)に迫られるが断る。「誰も好きにならないと決めているから」。片思いの人がいるのね。「僕が好きになった人は、恋はしないと決めていた人だった」

 マンガを描く二人の部屋を八作が訪れる。かごめの穴の開いた靴下に八作は気づく。とわ子の誕生日が近づく。八作は「コレあげる」と包みを渡した。「靴下です」「二つある。もうひとつは唄(うた)のか」。唄は八作との間に出来た娘だ。

 八作の店で、とわ子と二人きりのとき。彼女が「あなたの心に片想いの人がいると気がついたの。私は勘がいいから。それが許せなくて別れた」。とわ子のスマホが鳴った。かごめからだ。しばしあって、彼女は靴下の意味に思い当たる。「全然、勘よくないな、アタシ」。やはりこのドラマの最重要人物は市川実日子だ。

 次の回、かごめが心筋梗塞で亡くなった。マンガが完成した直後のようだ。本当の死因は謎だ。唐突な死で、このドラマと、かごめは伝説になる。

INFORMATION

『大豆田とわ子と三人の元夫』
フジテレビ系 火 21:00〜
https://www.ktv.jp/mameo/

(亀和田 武/週刊文春 2021年6月3日号)