1988年度生まれは、「ゆとり世代」と呼ばれる一連の世代の走りでもある。ただし、この世代が育ったのは、従来のいわゆる日本型経営の特徴であった終身雇用や年功序列などの制度が崩壊し、「ゆとり」どころか個人間の実力による競争が激しさを増していった時代だった。

 大島優子が2006年から8年間所属したAKB48は、まさに競争社会の縮図でもあった。グループ卒業を前にしたインタビューで彼女は《AKB48は競争社会で、その渦の中に身を置きながらも、自分の個性を発揮して、他の子たちよりも前に出ないといけない。(中略)メンバーは何事にも意欲的に取り組んでいましたね》と振り返りつつ、《ただ、今は年下の世代に『そんなに欲がないんだ』とは感じています。若くなっていくにつれて欲がなくなってきてると思うんです》と、あとから入ってきた世代との違いも指摘していた(※5)。

 そもそも大島は子役出身である。AKBを卒業後、2017年より1年間、アメリカに留学した理由の一つには、《ちょっと仕事が嫌いになりそうだったので(笑)。子役からずっとこの世界にいるから「ほかにいい人、いるんじゃないか?」》と別の道を探そうという思いもあったという(※6)。

 しかし留学中に自分が「何者でもない」ということがわかり、《役が「すん」と自分のなかに入って、体の底でポンッと跳ね返って自然に外に出す感覚がつかめてきた》らしい(※6)。こうして帰国後も俳優業を続けることになる。

 競争社会のなかでがむしゃらに生きながらも、ときにはそれを一歩引いて見つめ直し、あくまで自分の人生を歩もうとする。「ゆとり世代」という呼び方には揶揄的なニュアンスがつきまとうが、上記のような人生の捉え方は、ポジティブな意味での「ゆとり」のなせる業ではないだろうか。