「あなたの年齢で勤められるのは介護職くらいでしょうね」 年下の入居者を介護する国立大卒男性(70)の“胸の内” から続く

 56歳から介護業界に飛び込んだ真山剛氏は、介護の世界について「想像をはるかに超えた、汚く危険で、きつい世界だった」と語る。

 しかし、同氏が自身の体験をまとめた著書『 非正規介護職員ヨボヨボ日記――当年60歳、排泄も入浴もお世話させていただきます 』(三五館シンシャ)には、介護業界の微笑ましいエピソードが数多く収録されている。ここでは同書の一部を抜粋。入居者男性との交流を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

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「大のほう」の失禁

 数日前から島田藤太郎さんの元気がない。彼は入居してまだ4カ月だ。

 ある職員に事情を聴くと、入所以来、初めて大のほうを失禁し、汚した下着をこっそりと洗濯室の洗濯機に忍ばせた(*1)という。そのことが発覚し、すべての洗濯物を再度洗い直す悲惨な結果になったという。その顛末がなぜか彼の耳に入ってしまい、プライドを傷つけたのだ。

*1 毎日、入居者の下着やシーツなど大量の洗濯物が出るため、職員がそれらを洗濯し、乾燥させる洗濯室がある。入居者の入室は禁止だが、彼はこっそり侵入し、洗濯物の間に汚れた下着を押し込んだらしい。そのときの彼の心中を察すると少し気の毒になった。

 彼は長い間、保護司(*2)をしていたと言葉少なに語ってくれたことがある。そのことに誇りを持った紳士だった。

*2 犯罪や非行をしてしまった人の更生や社会復帰を支援する資格。ボランティア色が強い。彼が自分は保護司だったと何度説明しても、別の入居者たちは「保護者? 保母さん?」などと見当違いなことを言っていた。

 今回の失態は一部の職員しか知らないことになっていたが、彼には職員のよそよそしい態度がたまらなくつらかったようで、間違いなくそのことが元気をなくした原因だった。


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 さらに1週間ほど経ったある日、ある女性職員からこう相談された。

「ねえ、真山さん。島田さんがまた汚した下着をどこかに隠しているみたいよ。部屋に入ると窓が開けてあって、それでも少し臭うのよね。あなた、彼と仲良しでしょ。うまく聞き出してよ」

 たしかに彼はまだ私にだけはカラ元気を見せてくれていた。その理由に心当たりがあった。