「そんな男性いませんよお」被害女性が打ち明けた“苦手意識”と“アニソンを歌う男”《大阪カラオケパブ刺殺》 から続く

「ヒロシという男を知っていますか」

 天満駅から徒歩30秒のところにあるカラオケバー「ラブリッシュ」でマネジャーを務めるりほさん(24)が大阪府警捜査一課の刑事とそんなやりとりを交わしたのは、6月14日の15時頃だった。

 この日、普段は出勤の直前まで眠っているりほさんは昼過ぎに友人からの電話で起こされ、天満で殺人事件が起こっていたことを知った。続いて、別の店のオーナーからの電話で、その事件の被害者が稲田真優子さん(25)である可能性を告げられた。寝ぼけていたりほさんの頭が真っ白になる。


亡くなった稲田真優子さん 友人提供

 とはいえ被害者が特定されたわけではない。一縷の望みにかけて稲田さんの無事を祈った。りほさん自身の安否を心配するLINEも数多く届いていたが、とても返信する気にはならなかった。

 だが、しばらくすると殺害現場が稲田さんがオーナーとして今年1月にオープンしたカラオケパブ「ごまちゃん」で、被害者が稲田さん本人であることが判明した。ラブリッシュは稲田さんが16年5月から昨年7月まで「まゆ」という源氏名でアルバイトをしていた店であり、りほさんが入店した4年前、新人指導を担当したのが稲田さんだった。以来、稲田さんはりほさんを妹のように可愛がり、りほさんも姉のように慕っていた。

後輩に対しても常に敬語だった

「まゆさんは、お客様にも、そして私たちにも常に敬語で接していました。私が『敬語で話すのはやめてくださいよー』と言うと、『りほさんが敬語をやめない限りやめません』と。礼儀正しく、本当に可愛らしい女性で、人気がありました。私は11月が誕生日で、まゆさんは12月。誕生日月の売り上げを競いましょうと話していたんですが、とてもかないませんでした」

 以下、稲田さんのことは「まゆさん」、もしくは私を含めた常連客に親しまれた愛称の「まゆ太郎」と表記する。

 事件の直後から、まゆさんの前職場である「ラブリッシュ」周辺には多くの報道陣が集まった。だが男性オーナーからの指示もあり、りほさんはすべての取材を断り、店でも積極的に語ろうとはしなかった。そんな彼女が、私の取材にだけ応じるのは、私がまゆさんと2年来の友人であることを彼女も知っていたからだ。