恋愛によって王室が危機に陥った前例

 海外に目を向けてみると、イギリス王室では、20世紀の間にも王族の恋愛によって王室が危機に陥ることが何度かありました。

 有名なのは、エリザベス女王の伯父にあたるエドワード八世と米国人女性シンプソン夫人の「王冠をかけた恋」です。国王は人妻であるシンプソン夫人と恋愛の末に王冠を投げ出し、在位はわずか1936年の1年だけで終わりました。当時は英国王室を揺るがす大スキャンダルだったわけですが、今回の眞子さまの問題を考えるうえで参考になるのは、その19年後に再び王室を揺るがすことになるエリザベス女王の妹マーガレット・ローズ王女の恋愛問題のほうです。

 マーガレット王女は、エドワード八世の後を継いだ父ジョージ六世の侍従武官だったピーター・W・タウンゼント大佐と恋仲になり結婚を考えるようになりました。しかし大佐は16歳年上で離婚歴もあったため、政府首脳と王族たちは二人の結婚に猛反対します。すでに即位していたエリザベス女王もあきらめるよう促しましたが、マーガレットは抵抗します。

個人の恋愛か王族の義務か

 そこで政府は、もし結婚するのであれば、王位継承権に加え、王族としての年金受給権も剥奪すると宣告したのです。

 マーガレット王女は結婚を諦め、宮殿でタウンゼント大佐に別れを告げます。国民に対してはBBCを通じて、「ピーター・タウンゼント大佐と結婚しないと決意したことを、ここにご報告します」と声明文を発表しました。

 王女は次のようにも述べています。

「私の権利の放棄を条件に、民事婚で結婚することができるかとも考えました。しかしキリスト教徒の結婚は永遠であるという教会の教えに鑑み、また、我が国に対する私の義務を自覚し、他の何にも代えてこうしたことを優先することにしました」

 マーガレット王女はこのとき25歳。個人の恋愛よりも王族としての義務を優先させたのです。

( 後編 に続く)

眞子さまのご結婚が“恋愛問題”で済まされない深刻な理由《黒田清子さんは皇族のお相手としてふさわしい方を…》 へ続く

(保阪 正康/文藝春秋 2019年6月号)