この約1カ月前の97年12月21日に、緒方の父である孝さんが殺害された際には、通電を行ったのは緒方であり、隆也さんと智恵子さん夫妻は遺体の解体と遺棄のみを手伝っていた。その段階での犯罪行為は死体損壊と死体遺棄だったのだが、和美さん殺害において、ついにふたりは殺人の実行犯となってしまったのだった。

 これにより、彼らは松永に大きな弱みを握られたことになり、わずかに残されていた逃走の可能性についても、みずから蓋をしてしまったと考えられる。

和美さんの死体解体「血抜き作業」と「煮炊き作業」

 和美さんの遺体の解体作業は、松永の指示により、緒方と智恵子さん、隆也さん、花奈ちゃんの4人で行うことになった。解体に必要な道具の購入費用は、緒方を含む緒方一家が松永から借用するかたちをとり、殺害から間もなく隆也さんが買いに出ている。解体は彼の帰宅直後から始められた。

 そこでの様子については、前記公判における判決文(以下、判決文)に詳しい。

〈和美の死体解体の際、和美の死体は脂肪が多く、解体しにくかったこと、肉片や内臓を鍋で煮るとき、臭いを消すために、松永の指示で、しょうがやお茶の葉を入れたこと、便が腸にたくさん詰まっており悪臭がしたことを覚えている。松永は、他の死体解体時よりも特に細かい指示をした。緒方が、和美の腸に便が詰まっていることを報告すると、松永は、「ペットボトルを半分に切って、そこに便を絞り出せ。」と指示したので、智恵子が腸から便をペットボトルに絞り出し、緒方がその便をトイレに流して捨てた。また、松永は、ペットボトル内の肉片等を捨てる作業を急がせたり、骨や歯をフェリーから海に投棄させたりした。松永は花奈も死体解体作業に従事させた〉

 なお、前記公判において、松永と緒方は、死体解体時の「血抜き作業」と「煮炊き作業」について、異なる証言をしている。

●血抜き作業

「5、6時間温水を掛けながら行った(その間ガスを使用した)」(松永)

「水を掛けながら行った(その間ガスを使用しなかった)」(緒方)

●煮炊き作業

「死体1体あたり最低20回は鍋を掛け、終始強火で3時間から3時間半くらい煮込んだ」(松永)

「死体1体あたり5、6回くらい鍋を掛け、一旦沸騰させて、弱火で2、3時間煮込んだ」(緒方)

 なお、和美さんの死体解体作業は、1月下旬頃に終了したとされる。