次なる殺人計画へ

 和美さんが殺害された後、次に松永が殺害のターゲットとしたのは智恵子さんだった。そこで男性の隆也さんではなく智恵子さんを狙ったのには、松永なりの考えがあったようだ。論告書は触れる。

〈智恵子は孝夫妻の実の娘であり、松永に対する反抗のおそれという意味合いでは隆也に勝る危険がある上、解体作業にあっては若い男手である隆也の方が頼りになる一面があった。また、(広田清美さんの父親の)由紀夫事件においても顕著なように、松永は、壮年男性を手に掛けるについては相当に慎重になっていた節があり、当時38歳の壮年男性であった隆也についても、由紀夫同様、生活制限と虐待を通じて衰弱させ、十分に弱らせた上で対処を考えるつもりであったと認められる〉

 こうして、智恵子さん殺害を決めた松永は、まず住居を振り分けた。広田由紀夫さん、それに緒方一家の孝さんと和美さんを殺害・解体した「片野マンション」30×号室には、広田清美さん、隆也さん、隆也さん夫妻の長男である佑介くんを残した。そして松永は、緒方と長男、次男、さらに智恵子さん、花奈ちゃんを連れて「東篠崎マンション」(仮名)90×号室に拠点を移したのである。判決文には次のようにある。

〈松永は、甲女(清美さん)を同行させて、智恵子を買い物等に行かせるときのほかは、智恵子と花奈を「東篠崎マンション」の浴室に閉じ込め、同人らが起きているときは洗い場に立たせておき、寝るときは浴槽の中で向き合わせて体育座りの姿勢で寝かせた。松永は、緒方に指示して、智恵子と花奈にマヨネーズを塗った食パン数枚を食事として与え、たまに菓子パンやカロリーメイトを与えた。小便はペットボトルにさせ、大便はトイレでさせたが、便座を上げ、尻を便器に付けない状態で排泄させた〉

智恵子さんの顔面に理不尽な通電を繰り返し

 論告書は松永による通電の状況を明かす。

〈また、松永は、智恵子に対し、特に理由もなかったのに、理不尽な通電を繰り返していた。智恵子がもっともひどい通電を受けていたのは、他の緒方一家の者と同様に、殺害される直前期のことであった。そして、松永の通電は、この時期はほとんど智恵子に集中していた。

 

 このころの松永による智恵子に対する通電は、ほとんどが顔面に対するもので、それが毎日何度も繰り返されていた。そのためか、智恵子は通電を極度に恐れて一層萎縮してしまい、また、和美同様に耳が遠くなったのか、松永の指示を取り違えてしまうことも多くなっており、そのため、更に通電を受ける結果になっていた〉