起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第71回)。


北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

電気コードで首を絞め、ついに殺人の実行犯に

 1998年1月20日、松永太の意向に忖度した緒方純子と緒方一家の大人たちは、度重なる通電での虐待によって精神に変調をきたした、緒方の母である和美さん(仮名、以下同)の殺害を決めた。

 浴室内で横たわる和美さんに対する殺害方法については、松永が指示を出した。それは緒方の妹の智恵子さんが足を押さえ、智恵子さんの夫である隆也さんが、電気の延長コードで首を絞めるというもの。その様子を緒方と隆也さん夫妻の長女である花奈ちゃんが見守り、松永はひとりで離れた和室にいた。

 以下、福岡地裁小倉支部で開かれた公判での検察側の論告書(以下、論告書)にある、緒方の証言をもとにしたその際の様子である。

〈和美は、「片野マンション」(仮名)の浴室の洗い場に、仰向けに目を閉じて横たわっていた。隆也は、和美の肩付近にしゃがみ、松永の指示どおり、和美の首に電気コードを巻き付けて首を絞めた。この間、智恵子は、松永の指示どおり隆也とともに浴室に入り、和美が暴れないよう和美の両足を押さえ付けていた。当初、隆也が首を絞める力が弱かったためか、和美は苦しみもがき、「グエッ」というような音を口から発したが、隆也が更に力を込めて首を絞め、智恵子が上体を和美の足に覆い被せるようにしてその体を押さえ付けているうちに、やがて、和美は動かなくなった。

 

 隆也は、浴室の出入口付近に立っていた緒方の方を振り向き、「もう、いいですか。」と、首を絞めるのを止めてよいかと尋ねてきた。緒方が、「もう、いいんじゃないか。」と答えたところ、隆也は電気コードから手を放した。隆也が和美の首を絞めていた時間は、5分以上10分以内くらいではないかと思う。緒方は、和美の死に顔を見て、開いた口から歯が見えていることに気付き、「自分も歯が出ているから、こんな状態で死ぬんだろう。」などと、ふと思った〉

 その後、緒方は和室にいた松永に「終わりました」と報告。松永は、「そうか」と答えて洗面所に来ると、和美さんの両手を胸の前で組ませるように指示している。