北海道のある町に知る人ぞ知る「看板のない鉄砲師」がいる。

 私は羆(ヒグマ)とハンターの攻防をテーマに取材していながら、「銃」や「射撃」については門外漢だ。だが「銃」のことを知らなければ、勝負の機微に触れることはできない――そんなことを考えていたときに、ひょんなことから羆ハンター御用達の鉄砲職人である山崎和仁(仮名)の存在を知った。(全2回の1回目/ 後編 に続く)


札幌の町中に出没した158キロのオス ©時事通信社

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顧客は腕利きのハンターばかり

 山崎の店は“一見さんお断り”で、顧客は腕利きのハンターばかり。既製品の銃は扱わず、顧客のニーズを完璧に満たすオンリーワンな銃をオーダーメイドで製作しているという。何となく無口な職人のような人をイメージしていたが、実際に会った山崎は70歳とは思えないほど若々しく、その明晰な語り口が印象的だ。本業は別にあり、鉄砲製作は「あくまで趣味です」と笑うが、北海道公安委員会が指定する射撃指導員の資格を持つ射撃のスペシャリストでもある。

 もともとメカ好きだった山崎が銃の世界にのめりこんだのは、会社員としてアメリカに駐在していたときに、射撃場で本物の銃に触れたのがきっかけだった。

「銃というのは、自動銃の場合、弾を込めて発射するまで8工程あります。つまり(1)装填(2)引き金を引く(3)逆弧が外れる(4)撃針が前進する(5)雷管が作動する(6)火炎が薬室に至り、火薬の燃焼が起こる(7)その反動または燃焼ガスの圧力を利用して、閉鎖装置を解放する(8)ボルトあるいは遊底が後退し排莢をする――それをわずか1000分の1秒の間にやってしまう。しかもバッテリーもモーターも使わない。そのシンプルさが面白いな、と感じました」

 NYに転勤後、通うようになったサフォークの射撃場では、こんな出会いがあった。

「その射撃場で会ったリタイアしたおじいさんがね、こんなにちっちゃい自作らしい弾薬で撃っているんですけど、それがめちゃくちゃ当たるのね。100mの距離で5発撃って、それが全部的の真ん中に命中するんです。それを見てスゲエなあ、と。そこから弾薬にも興味が出てきて自分なりに研究するようになったんです」

 退職して日本に帰国した後も研究を続ける中で、米国駐在時代の業務で武器類を扱っていたノウハウを活かして、銃の輸入を手掛けるようになる。