逮捕歴は25回、刑務所暮らしは通算30年以上――シャバに戻ってきた男がまずやったのは、4歳女児の殺害未遂というあまりにも残忍な行為だった。捕まった男が語った、その身勝手な犯行理由とは?

 ノンフィクションライターの小野一光氏の新刊『 昭和の凶悪殺人事件 』(幻冬舎アウトロー文庫)より一部抜粋してお届けする(全2回の1回目/ 後編 を読む)

*登場する人物名はすべて仮名です。

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腸が飛び出た姿で発見された幼女

 昭和60年に窃盗で逮捕され服役した男は、出所の直後に事件を起こした──。

「パチンコをしてるあいだに、4歳の娘がいなくなった。捜してほしい……」

 関東地方某県のC署に電話があったのは、午後1時過ぎのこと。誰もいない派出所の電話を使い、母親の内田響子が通報したのだ。すぐにC署員が駆けつけると、彼女は狼狽した顔で言った。

「P駅前のパチンコ店に娘の博美と来ていましたが、正午頃に姿が見えなくなったんです。博美の身長は1メートルくらい。髪は長くてポニーテールにしています。目はぱっちりしていて、服装は長袖シャツに毛糸のベスト、長ズボンで、上から下まで全部ピンク色です」

 署員はすぐに迷子として管内全域に手配を行い、同時にパチンコ店やその周辺での聞き込み捜査を始めた。すると1時間半後に、捜査員の一人が、C市に住む主婦から、気になる情報を入手してきた。それは次のようなものだ。

「お昼頃、P駅裏の路上で、50歳くらいの労務者風の男が、ピンク色の服を着た4、5歳くらいの女の子の手を引き、U山の方角に行くのを見ました」

 これにより、誘拐事件の疑いが出てきたことから、県警本部の捜査一課が動くことになり、各駅への張り込みや聞き込み及び、被害者の自宅である内田家の電話への、逆探知手配などが行われた。

「U山の山中で幼女が血を流して倒れている」

 通報があったのは、捜査員が動き始めて3時間半後。やがて現場に到着した捜査員は、無線で次のように報告した。

「負傷した幼女は、人着(にんちゃく。人相と着衣)からして内田博美ちゃんと思われる。頸部及び腹部に切創(せっそう)があり、腸が突出している。意識はあり、すぐに救急車の要請を願う」

 幼女はすぐに救急車で病院へと運ばれ、そこにやってきた響子によって、彼女の娘であることが確認された。

 幼女を誘拐したうえ、殺害を企てた残忍な事案であったことから、県警はただちにU署に捜査本部を設置、捜査が始まった。