11月27日、新宿駅西口の地下広場。私はわが目を疑った。100人ほど(主催者発表数百人)の在日中国人の若者たちが、集まって中国政府に抗議しているのだ。マスクや帽子、メガネなどで顔を隠している人が多いものの、見たところ一般人っぽい雰囲気である。日本語が上手な人も多く、留学生の比率が高いのだろう。

 たくさんの人たちが、手に白い紙やプラカードを持っている。プラカードの文言はかなり手厳しい。「ゼロコロナ政策反対」「自由を、さもなくば死を」「習近平くたばれ」「中国共産党の思考様式は人類文明の最大の脅威だ」「人類は共産党を歓迎しない」……。多くは油性ペンでの手書きで、印刷されたものもせいぜいワードソフトで作っただけという手作り感が満載である。


「白い紙」は、今年に入ってからゼロコロナ政策や習近平政権の3期目突入に反対して街に出た中国人がしばしば掲げるようになったアイテムだ(抗議のスローガンが書かれていれば逮捕後に大変なことになるが、ただの紙だけなら処罰されにくいからである)。2022年11月27日、筆者撮影。

 参加者がかわりばんこに演説に立つ。即興で喋っているらしく、上手い人と下手な人の差が激しいが、聴衆はしっかり聞いているようだ。やがて、ノリのよさそうな青年を中心に、口々にこんなスローガンを叫びだした──。

「共産党下台!(中国共産党は政権を手放せ!)」

「習近平下台!(習近平は辞めちまえ!)」

 私は来年、中国に触れるようになって23年目、中国ライターとして仕事をして13年目である。しかし、まさか中国共産党や国家主席の下野を、中国人の若者が集団で叫ぶ現場に居合わせる日が来るとは思わなかった。しかも、ここは北京でも上海でもなく、日本の東京なのである。

ゼロコロナ政策、成功から失敗へ

 現在の異常事態に至った経緯を簡単に説明しておこう。中国が厳格なゼロコロナ政策(動態清零)を徹底し続けていることは、日本でもよく知られている。

 これは非合理的かつ長期間のロックダウンを伴うものだが、コロナの脅威が深刻だった昨年までは、多くの国民から一定の理解や支持を得ていた(むしろ2021年夏ごろには、中国だけがコロナ封じ込めに成功してアフターコロナ時代に入っていると、当局が世界に対して大威張りをしていたくらいである)。