性的グルーミング(性的懐柔)は、顔見知りやSNS上にいる“普通の大人”が子どもと信頼関係を築き、優位な立場を利用して性的な接触をする行為だ。子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。大人は、子どもの異変やSOSをいかに察知すればいいのか?

 ここでは、精神保健福祉士・社会福祉士としてさまざまな依存症治療に取り組む斉藤章佳氏の著書『 子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か 』(幻冬舎新書)より一部を抜粋し、実際に行われた性的グルーミングの手口を紹介する。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)


写真はイメージです ©iStock.com

◆◆◆

事例: 家族ぐるみで親しかった「やさしいお兄さん」の正体

 C(30代男性)は、4年間にわたり小学生男児への性加害を繰り返していた。Cと同じ団地に暮らしていたその男児は不登校で、両親は共働き。平日は両親が家を空けていたので、男児が団地の共有部分でひとりで遊んでいる姿を近所の人もしばしば目にしていたという。

 Cが初めて男児に出会ったとき、男児は小学校2年生だった。Cは男児に声をかけ、子どもたちの間で人気のキャラクターゲームで「一緒に遊ぼう」と声をかけた。最初は、団地の共有部分で一緒に遊んでいただけだったが、しばらくするとCは男児を自室に招き入れるようになった。その際、「ここに来られるのは君だけだよ」とCは男児に告げたという。

 Cの自室では、男児はゲームや勉強をして過ごしていた。また、不登校で学校に行けないことをCに相談していた。すっかりCになついた男児の様子に、両親は「私たちが日中、面倒を見られないばかりに預けてしまって申し訳ない」とCに繰り返し感謝の意を述べ、ときに夕飯にCを招くなど、家族ぐるみで良好な関係を築いていた。

 男児が3年生になった頃から、Cは男児を膝の上に乗せたり、抱き上げたりといったスキンシップを増やしていった。その後、行為はエスカレートし、男児のズボンの中に手を入れ、性器に触れるようになっていた。さらに男児が5年生になると、加害行為は口腔性交や肛門性交にまで及んだ。その際、Cは「お母さんに言ってはいけないよ」「ふたりだけの秘密だよ」とたびたび口にし、男児に口止めを行っていた。

 男児が6年生のとき、父親の仕事の都合で転校したことで加害行為は終わった。その後も男児は長年被害にあったことを誰にも相談できず、フラッシュバックなどの後遺症に苦しむことになった。