〈 小学生男児が30代男性から4年間も“性虐待”「ズボンの中に手を入れ、さらに…」性加害者が行う“性的グルーミング”の手口 〉から続く

 性的グルーミング(性的懐柔)は、顔見知りやSNS上にいる“普通の大人”が子どもと信頼関係を築き、優位な立場を利用して性的な接触をする行為だ。子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。大人は、子どもの異変やSOSをいかに察知すればいいのか?

 ここでは、精神保健福祉士・社会福祉士としてさまざまな依存症治療に取り組む斉藤章佳氏の著書『 子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か 』(幻冬舎新書)より一部を抜粋し、実際に行われた性的グルーミングの手口を紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)


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事例:人気塾講師が「英語の勉強」を口実に自宅へ誘う

 個別指導の英語塾で講師を務めるD(30代男性)は、学生時代に海外留学の経験があり、英語の発音はネイティブ並み、さらに細身でスマートなルックスも相まって女子生徒からの人気が高かった。

 当時Dが担当していたなかに、中学校1年生の女子生徒がいた。彼女は精神疾患のある母親を持ち、家事やきょうだいの世話を一手に担っていた。父親は「家事は女がやるもの」と強く主張し、ときに女子生徒が勉強や部活で疲れ切って寝てしまうと、「長女なのになぜ家事をやらないんだ」と日常的に叱責し、女子生徒は次第に家での居場所がなくなっていった。

 ある日、女子生徒が「どうしたら先生のように英語を話せるようになるんですか?」と英語の勉強法について講師室にいるDに相談した。Dは女子生徒に英語で日記を書くようにアドバイスをし、その日記を添削してあげると約束した。このことがきっかけで、女子生徒はDと個人的に話す機会が増えていった。

 さらにDは女子生徒の家庭についての相談にも乗るようになった。それまで周囲の大人や友達に家庭の話をしても「大変だね」「頑張って」と言われるだけだったが、Dは具体的なアドバイスを施したことから、女子生徒はDに対して親近感を抱いたという。

 次第にDは、英語の勉強と称して塾の外で女子生徒とふたりきりで会うようになっていった。公園や喫茶店で過ごし、さらに自宅にも招き入れるようになった。自室では自分が留学していた頃に撮影した写真を女子生徒に見せていたが、そのなかには女性のヌード写真も含まれていた。怪訝(けげん)な顔をする女子生徒に対してDは「芸術作品だから」と語り、繰り返し性的な写真を見せるようになった。

 ついには女子生徒が中学校を卒業すると、Dは自宅に泊まりに来るように誘い、その夜に性行為に及んだ。性行為はそれきりで、ふたりは二度と会うことはなかったものの、女子生徒はやがて不特定多数との性行為を自傷行為的に繰り返すようになった。