首相に近い自民党幹部は「負けに不思議の負けなし」

 加えて痛かったのが広島です。自民党は広島では勝てると踏んでいたはずです。保守王国・広島の基礎票は、ざっくり言って自公50万票、野党30万票。しかし、結果は、与党候補の西田英範氏は33万票しか獲得できず、野党統一候補の宮口治子氏に37万票を取られ、負けました。敗因は自民党の典型的な負けパターンである、支持者が投票に行かなかったためと分析されています。

 二階俊博幹事長は今年3月の記者会見で、河井夫妻の買収事件について「党としても他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と発言しましたが、河井案里氏は二階派。「自分の庭の石」についてもどこか他人事でした。

 代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。

 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。