水面下で活発化する「菅おろし」の動き

 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。

 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。

 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。

 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。

菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った

 では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。

 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。