雪国では、積雪のために冬期通行止めとなる道路は珍しくない。だが、1年のうち約1ヵ月しか通行できない道路と聞いて、残りの11ヵ月間通行できない理由を即答できる人はほとんどいないだろう。それどころか、そもそも「そんな道路がなぜ建設されて存在するのか」と疑問を抱いてもおかしくない。

 そんな道路が、北海道に実在する。その名は道道1116号線。通行期間が極端に限られる“幻の道路”として、近年はわざわざこの道路を走るために、北海道外からもドライバーやライダーがやってくるという。

“幻の道路”の入口は…


チョボチナイゲート入口。「開通」の文字がまぶしい

 毎年9月から10月の約1ヵ月だけ通行が認められるのは、旭川空港の南東約20kmに位置する忠別湖の北岸にあるチョボチナイゲートから、北方の東川北7線ゲートまでの12.4km。もともとは富良野市から上川町までの一般道路として計画された道道1116号線(富良野上川線)の一部区間が、“幻の道路”と化している。

 チョボチナイとはいかにもアイヌ語っぽい地名で、ゲートの手前に架かる車道の橋はチョボチナイ橋、その下を流れて忠別湖へ注ぎ込む渓流はチョボチナイ沢と名付けられている。だが、この地域に関するアイヌ語の地名解説書を開いても、「チョボチナイ」という地名そのものは出てこない。

 ただ、明治・大正期の古地図を見ると、現在のチョボチナイ沢のあたりに「カムイチェプオッナイ」(鮭・乱入する・谷川)という川が流れている(由良勇『上川郡内 石狩川本支流 アイヌ語地名解』P83より)こと、そこから「カムイ」を取った「チェプオッナイ」(魚・多くいる・川)でも意味が通る(北海道庁ホームページ「アイヌ語地名リスト」より)ことから、「カムイチェプオッナイ」あるいは「チェプオッナイ」が転じて「チョボチナイ」になったのではないか、と推測することはできる。

 いずれにせよ、稚内とか幌加内のように漢字が充てられずカタカナ表記のままにされたことで、北海道の原野を走る“幻の道路”の入口らしさを際立たせている。