今回の選挙結果は、文政権のオウンゴール

 公正、正義、平等、清潔、正直、庶民的……といった政権イメージがすべてアウトとあっては民心もこれ以上、ガマンならない。与党(政権)は負けるべくして負けたのだ。

 選挙後に与党、野党そしてメディア(世論)から異口同音に出ているのが「野党がよくやったからではない!」である。あくまで与党(文政権)のオウンゴールだというのだ。そしてまたみんな異口同音に「民心は恐い」といっている。今後、与野党の状況しだいではまた民心がコロッと一転することがありうるからだ。

 筆者はオンライン出演の日本のテレビ討論(BSフジ・プライムニュース)で「それでも文政権にはいいこともあったのでは?」と質問され一瞬、絶句した。そして「(民主化とか人権を独占してきた)韓国の左翼・進歩勢力の仮面がはがれたことが最大の功績かな」と皮肉を言うしかなかったが、今回の与党の惨敗で野党(保守勢力)への支持と期待が高まっているわけでは必ずしもない。それは今後次第なのだ。

 近年の韓国世論の保革ないし左右の固定支持層は30対30でほぼ均衡し、残り40の中間層の奪い合いといわれる。今回、中間層のうち30が与党(政権)離れして野党についたため、野党が60対40の比率で勝ったことになる。この政治的分布図は次期大統領選でも変わらない。与野党どちらが中間層を多く引き付けるかにかかっている。

「左翼積弊清算!」で投獄されかねない

 韓国の大統領選では決まって「時代精神」という言葉が登場する。時代の流れに合った世論の期待にいかに応えるかという話だが、その意味では先に指摘した公正、平等、正義……など文政権によって傷つけられた“徳目”は「時代精神」としては残っている。文政権も公約は間違っていなかったのだ。野党(保守勢力)は今後、中間層を取り込むためにその「時代精神」をいかにリニューアルできるか。オウンゴールだけでは大統領選には勝てない。大統領選は「過去審判」より「未来選択」だという。

 これに対し文政権および与党は左翼・革新勢力による権力維持、つまり「政権再創出」に血眼になるだろう。野党・保守勢力に政権を握られれば、今度は偽善を積み重ねた自分たちが「左翼積弊清算!」として法廷に立たされ、投獄されかねないからだ。これからが本番の韓国政局はさらに熾烈になる。

(黒田 勝弘/文藝春秋 digital)