日本のアニメ文化は海外で高く評価され、外国人が日本に興味を持つ一つのきっかけとなっている。その人気は欧米や中国のみならず、アラブ地域にまで広がるほどだ。“中東きっての有名日本人” 鷹鳥屋明氏は、アニメの出来をめぐってアラブの王族と掴み合いの喧嘩をしたこともあるのだという。

 ここでは、同氏の稀有な実体験をまとめた『 私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか? 』(星海社新書)の一部を抜粋。知られざるアラブ世界の一面を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

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中東で人気になったジャンル、忌避されるジャンル

 “日本アニメーション”制作のアニメ作品は根強い人気があり、『小公女セーラ』や『ちびまる子ちゃん』は人気の作品でした。ちなみに『ちびまる子ちゃん』はアラブではそのまま『マルコ』というタイトルで放送されています。この作品に関してはいわゆる「日本人の日常」を描いているという点で人気があったようです。


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 日本のアニメは流行っていますが、そのなかでもあまりファンであることを公言しにくいジャンルがあります。それはいわゆる“アイドル系アニメ”です。アラブでは「男は男らしく、女は女らしく」という価値観がいまだ根強いので、男性ファンはいるのですが『アイドルマスター』や、『ラブライブ!』を好きだということを堂々と公表しにくい環境にありました。表立って好きだと言える人は少なく、一度だけ『アイドルマスター』のシャツをドバイで着ていたアラブ人男性に会ったときにお話ししましたが、やはり周りに対して堂々と好きだ、と公言することの難しさについて訥々と語ってくれました(彼は次元の壁を超えて二次元に生きるそうですが)。

 どちらかというと、男女共に楽しめる作品から年齢が高くなる作品に関しては、男性は男性向け、女性は女性向けと性別ごとに観る作品の種類が固まっているという印象があります。ですが、オタクには国境がない、という言葉があるように日本でもコアな作品についてよく観ており、深い考察を語れるようなアラブ人男性、女性がいます。その度に日本のコンテンツの力を感じる瞬間でもあります。

 さらに、色々とアラブ人女性とお話をしていると、BLについて理解のあるアラブ人女性が増えていることに驚くことが多くなっています。国名について言及はしませんが、とある国のクローズドな環境で同人即売会が行われたこともあり、「ここでも即売会が!」と驚かされたこともあります。