こうしてバタバタと取材を受けていると、カタールテレビのスタッフから「うちの経営者があなたと会いたいと言っている。夜、時間を作ってくれ」とこれまた突然声をかけられ、ドーハマリオットホテルのステーキハウスで食事することになりました。この経営者というのが、サーニー家という、カタール王族の一族でした。印象的だったのが、ひたすら待たされたことです。王族の秘書とお付きの人と私の3人で「まだ来ないね」と待ち続けていたのですが、これもアラブ文化のひとつです。この「待たせる」というのは中東では当たり前のことなので、交渉事になったときに、ひたすら待たせることによって相手を折れさせることも交渉術のひとつなのかもしれません。さて、2時間待たされてやっと王族の方が合流し、一緒にステーキを食べながら色々とお話をしたのですが、話題のほとんどが日本のアニメでした。

白熱しすぎて取っ組み合いの喧嘩に

 サーニー家の人もここ20年くらいのアニメはだいたい網羅しているほど観ていたので、3時間ぶっ続けでアニメについて語り合いました。私よりも少し上くらいの同世代だったこともあり、アニメ談義が白熱したのですが、そのなかでちょっとしたハプニングが起こりました。

『スレイヤーズ』という90年代のアニメ作品の話になると、私と王族の方とで『スレイヤーズ』の続編である『スレイヤーズNEXT』と『スレイヤーズTRY』のどちらが良い作品か、という議論が白熱し、お互いの服を摑み合いながら激論を交わすことになってしまったのです。私はNEXT派で、王族はTRY派。

私    「貴様! NEXTのゼルガディスのカッコ良さがなぜわからんのだ!」

王族    「なに! 貴様こそTRYのヴァルガーヴの良さがなぜわからん!」

 と、お互いの推しを叫びながら取っ組み合いになり、これには秘書もボディガードも我々2人が何やら喧嘩していることはわかりますが、話している内容がまったくわからないので、我々が喧嘩しているところを止めにも入らず、「この人たちは何を争っているのだろう」とポカンと見つめていました。

 王族と『スレイヤーズ』がもとで摑み合いの喧嘩をすること自体、信じられないことでしたが、彼がそれほどまでにアニメ好きだったということでもあります。ひとくちに王族といっても何万人もいるので、彼のようなオタク王族がいてもおかしくはありません。相手が王族であろうがオタクはオタクなので、私も気軽に話せたことが印象的でした。オタクは国境だけでなく、身分も越えた一例です。

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(鷹鳥屋 明)