ソウルの観光地・明洞近くのホステルは、かつてKCIAの本拠地だった…“地獄の拷問”が行われた場所の今 から続く

ソウルのランドマーク「Nソウルタワー」を抱き、人気の観光スポットとして、そして、ソウル市民には憩いの場所として親しまれている南山(標高265.2m)。西側から東側に続くなだらかな散策路には今も多くの人が訪れる。

 そんな南山に最近、「ダークツアー(負の記憶が残る場所を巡るツアー)」と称して足を運ぶ人々がいるという。

 南山のダークツアーは南山北麓一帯をたどる。

 この一帯には、軍事政権時代(1960年代〜80年代)、韓国の「黒歴史」ともいわれるKCIA(中央情報部。現国家情報院)の本部やその施設が散らばっていた。(前後編の後編/ 前編 から読む)


KCIA6局を記憶する建物。郵便ポストの形は過去と疎通を図る、という意味が込められているという ©菅野朋子

◆ ◆ ◆

「人間を後ろ向きにさせて縛って、顔には水をかけられました」

 建物前には「記憶6」の表示板が。入り口でコロナ対策のために設置されたQRコードをかざし入場すると、正面の壁から突然、文字が流れ落ちてきた。思いもしていなかった演出だったので驚いて身がすくんだ。文字は止まらない。次々と「怖いです」「助けてください」、そんな文字が上から下へしたたり落ちてくる。

 中は狭いし暗いしで、おどろおどろしいことこの上ない。文字が落ちていく地下を覗き込むと、取り調べ室が再現されていた。机をはさんでイスが2つ。学生時代、ある事件の被疑者として目隠しされて連れてこられた男性は当時の様子をこう証言している。

「何もなかったですよ。机が2つだけ。その間に鉄棒がかけられていて人間を後ろ向きにさせて縛って顔には水をかけられました」(ハンギョレ新聞、2017年8月16日)

 この男性が記憶していた取り調べ室は2つ。水道があった広い部屋では水での拷問や、鶏を丸焼きにするかのように手と脚を棒に縛りつけられたまま殴られ続けた。もう一部屋である、小さな部屋にはイスが2つあり、ひとつは動けないよう床に固定されていたという。

 横の壁には突然、背広を着た男性の後ろ姿が現れた。ホログラムを思わせる映像。昔懐かしいチェック模様のジャケットを着ている。しゃがれた声。当時のKCIAが政府に反対する人々を虫けらのように考えていたことなどが赤裸々に語られていく。

 建物がポストの形になったのは「過去と疎通を図る」という意味が込められてのことだったという。

 6局跡から出て、南山方向を見やると、「ソウル特別市消防災難本部」が目に入る。ここもKCIA時代には留置場として使われていた場所だといわれている。