「 #遺失物統轄機構 」というタグとともに、X(旧Twitter)や pixiv へ投稿されている一連のイラスト。

とても面白そうなゲームに見えるのですが……実はこれ、ゲームではありません。ゲーム風のイラストなのです。

元のゲームが存在しないまま、まるで都市伝説のように思い出が語られ、ファンアートの二次創作やゲーム実況が生まれていく。架空のゲーム風イラスト『遺失物統轄機構』が話題になっています。

この世に存在しないのに、存在する。架空のゲーム『遺失物統轄機構』とは?

『遺失物統轄機構』は、CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)とBlenderでイラストを制作しているクリエイターのほしさん( @HOSHIBACKYARD )が手掛ける架空のゲーム風イラストです。

イラストに添えられたコメントなどから「遺失物と呼ばれる怪異と戦うゲーム」だと想像できますが、あくまでも架空のゲームなので全体図はわかりません。

UIやアドベンチャー風の構図、オープニング画面など、凝ったイラストの作り方は、本当に実在しているゲームの一場面を切り取ってきたように見えます。

SNSでは、「いつゲーム化されるんだろうか…」「本当にゲームにならないかな」など、実際にゲームとして遊びたいという声も多く寄せられています。

ファンの間では、存在しない架空の サウンドトラック や DLC(ダウンロードコンテンツ)のゲーム実況 などを二次創作として作る動きも。イラストを超えて、世界が広がり続けているのです。

「架空の資料集や攻略本などは作れたらいいなと思っています」

架空のゲームイラストから始まり、どんどん共同創作のように世界が広がっていく『遺失物統轄機構』。BuzzFeed編集部は、原作者であるほしさんにお話を伺いました!

――FANBOXに投稿されていた「 SCP(※)っぽい世界観で主人公が学生のちょっと怖いゲームがやりたい 」という制作開始時の記事を拝見いたしました。あらためて、具体的な制作のきっかけから教えてください。

※SCP:架空の都市伝説や怪物をWiki形式で投稿しあうサイトやジャンルのこと

ゲーム感を出すための制作過程 / ほしさんのPIXIV FANBOXより / Via xjkmla6j.fanbox.cc

「投稿記事を読んでいただき、ありがとうございます。おっしゃる通り、『こんなゲームが遊んでみたい』が第一にありました。加えて、絵を描くこととゲームを遊ぶことどちらも好きなので、この二つの楽しさを取り入れた活動ができたらいいな、と考えたのがきっかけでした」

「またゲーム画面風イラストを描いているイラストレーターさんたちの作品が好きで、よく見ていたことも大きかったと思います」

――作品を描くときに、どのようなジャンルやゲーム性を想定して描かれているのでしょうか?

「・可愛いアニメ調のキャラクターを操作できる」

「・一つの都市をオープンワールド形式で駆け回ることができる」

「・学生生活を楽しみつつさまざまな場所で発生する異常事態を解決していく」

「・戦闘は近接アクション要素強めで銃火器は切り札」

「…というイメージで絵を構成しています」

プールの底の向こう側にある学校 / ほしさんのpixivイラストページより / Via pixiv.net

―― ファンアート やゲーム実況など、ほしさんの作品からインスピレーションを受けて二次創作を楽しんでいる方も見られます。まさにSCPのように、共同創作を楽しむ広がり方をしていますが、今の盛り上がりを見た感想をお聞かせください。

「初めて自分の作品で二次創作をしてもらえた日は、うれしすぎるあまり何も手に着かなかったのを覚えています。絵や文章や音楽や動画、オリジナルのキャラクターデザイン、Unreal Engineで実際にキャラクターを操作できるものを作ってくださる方もいて、本当にうれしいです」

「大分余白のあるシリーズだと思うので、何か作ってもらえると私にとっても想像が更に広がって楽しいです」

――「こんなゲームがやってみたい」という想いから始まった『遺失物統轄機構』ですが、実際に二次創作などでゲーム化させてほしいといったお話などはありますか?

「お話をいただくことは何度かありまして、ありがたかったです。ゲーム制作の負担や難しさを考えると、とてもこちらからお願いできるようなことではないのですが、もし遊べる日が来るのなら遊んでみたいです……!」

――2021年10月3日の pixivへの投稿 から始まり、『遺失物統轄機構』の投稿を約3年近く続けられていますが、あらためて今のお気持ちや、投稿への反応に対する感想を教えていただけますか?

夜の学校を探索するゲーム妄想 / ほしさんのpixivイラストページより / Via pixiv.net

「最初の1枚目を制作したときは、こんなに自分自身が熱中し続けられるシリーズになるとは思っていませんでした。SNSで反応をいただけていることも大きな後押しになっていますし、見てくださる方や二次創作などで関わってくださる方には感謝しています」

「一方で、実在すると思われてしまったときの申し訳なさや、ゲーム制作者の方々が作り上げてきたフォーマットを間借りしていることへの罪悪感のようなものもあります。悪い意味で期待を裏切らないように、とにかく絵だけでも見ていて楽しいと思ってもらえるようこれからも頑張りたいと思います」

――たとえば、架空の設定資料集や架空のサウンドトラックを作ってみる、実際にゲーム化してみるなど、『遺失物統轄機構』に関して、今後やってみたいことがありましたら教えてください。

「架空の資料集や攻略本などは作れたらいいなと思っています。他にも、作品にプラスになることであれば自分のできる範囲で色々やってみたいなと思います」

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現在も、留まるところを知らずに広がり続ける『遺失物統轄機構』と、その二次創作作品。これからも注目していきたい、シリーズです。

なお、 最新のイラスト は、現在Xに投稿中。ほしさんのアカウントから確認できます。

移動失敗 / ほしさんのXより / Via x.com