疲れている女性

久しぶりに出社した日は、帰宅すると膝や腰が痛くなる…なんてことはありませんか? これ、実はいわゆる「運動不足」が原因。

外出自粛で家で過ごす時間が増えているせいで、以前よりも運動量が減ったと自覚している人も少なくないはずです。「このままだと体力自体が衰えて、生活に支障をきたすリスクがあります」と話すのは、パーソナルトレーナーとして活躍する清水忍さん。

日頃から運動を続けたほうがいいと頭では理解していても、私たちが運動不足からなかなか解放されないのはなぜなのか?その理由を教えてくれました。

普通の生活が困難に!? 体力が低下すると起こる最悪の事態って?

── おうち時間が増えたことで運動不足になったと自学している方は大勢いらっしゃると思うのですが、運動不足になると生活にどのような支障があるのでしょうか?

清水さん:

運動不足になることで、例えば「持久力」が低下してしまうと、長時間の運動が困難になります。

── ということは、持久力が低下すると仕事や育児をしてもすぐに疲れてしまうということでしょうか。

清水さん:

そういうことになりますね。他にも「筋力」が低下すると階段の上り下りや重たい荷物を運ぶことが辛くなります。

読者の方でいうと、子どもを抱っこするのが苦痛になるとか、買い物バッグを持ち運ぶのに苦労すると思います。「敏捷性」が低下すると反応が鈍くなり転びやすい、人にぶつかりやすいといったことが起こります。

── 運動不足になると生活にさまざまな支障をきたすんですね…。

清水さん:

実はそうなんです。持久力、筋力、敏捷性などをまとめて「基礎体力」と括っていますが、これらがすべて低下すると、生活に支障をきたすだけでなく、免疫力の低下にも繋がります。

なにより厄介なのが、運動不足が引き金となり、さらに運動をしない体ができ上がってしまうことです。できる限り体を動かさなくてすむ生活を選ぶようになり、体はどんどん怠けていってしまう。これを「不活動のクセがつく」と呼んでいます。

── 不活動のクセ…。負のループということですね。

清水さん:

そうです。習慣ってバカにできないんですよ。

例えば、今まで営業で外を歩き回っていた人が、コロナを機にリモートワークに移行してほとんど運動をしなくなったとします。

不活動のクセがついてしまうと、その人が乗ろうとしていたバスを乗り過ごした場合、以前であれば、次のバスを待つ時間がもったいないと、ひと駅くらい余裕で歩いていたのに、「歩くのはしんどい。次のバスを待とう」という選択肢を選ぶようになるんです。

── 不活動のクセがついてしまうことで、なるべくラクな方法を選ぶようになってしまうんですね。このままでは体力低下は避けられませんね。

清水さん:

こんな状態を放置してしまうと、免疫力が低下し病気を患う人も出てくるでしょう。運動不足の最大の問題は、この不活動のクセがつくことなんです。まずはこのクセを断ち切らならなければなりません。

1日に必要な運動量は実はそれほど多くはない

── では、運動不足にならないためには1日にどれくらい運動をすれば良いのでしょうか?

清水さん

アメリカのスポーツ医学会の見解では、1日に早歩きを30分程度すればよいと言われています。片道15分歩くと往復で30分。

ただし、ウォーキングは、カロリー消費や心肺機能を鍛えるのにちょうどいいのですが、関節の動きが小さいのです。ウォーキングに使われていない関節はほとんど動いていないので、ウォーキングだけすれば運動したことになるかと問われると、そうとは言いきれません。

どうせなら体の節々まで動かしたほうがいい。そこでおすすめなのが、可動域の大きい『ラジオ体操』をすることです。できれば一曲通して行っていただきたいですね。そうすれば、体の関節全体を動かすための運動としては十分です。

運動後の女性

── ラジオ体操というのは意外でした。仕事の合間にも軽くできそうですよね。

清水さん:

小さい子どもからお年寄りまで、みんなができる手軽な運動くらいがいいんです。無理してハードルを上げすぎてしまうと逆に続かなくなってしまいますから。

もっと言うと、椅子の上で伸びをしたり、少し立って屈伸するなど、30秒程度の動きを仕事の合間に何セットか繰り返すだけでも運動になります。

「運動したくない」気持ちをコロナのせいにしない!

── 清水さんのお話を伺い、運動へのハードルが低くなりました。自宅でも実践してみようと思います。

清水さん:

ハードルは低くして、継続することの方が大事です。最近私が、ジムに通う生徒の皆さんやメディアの取材でよく話すのが「コロナを言い訳にして、運動不足の自分を肯定するな!」ということ。

ちょっと厳しい言葉になってしまいますが、運動をしない人はコロナであろうとなかろうと関係なく運動はしないんです。「外に出られない」「どこにもいけない」ことを盾に運動したくない自分を肯定しているだけに過ぎず、怠けてしまう人はどこまでも怠けてしまう。

ですから、近くに公園があれば、そこまで散歩して帰ってくるだけでもよし。適当にストレッチして帰ってくるだけでも充分です。とにかく体を動かしましょう。何もしないと不活動のクセはずっとそのままです。積極的に体を動かすことを意識してみてください。

多くの方が「それ運動するぞ!」と意気込むのですが、その意気込みが極端なせいで、長続きしない場合が多いんです。大切なのは極端で短命な取り組みではなく、長続きするごく普通の取り組み。すぐに、簡単に、しかも大変な思いをしなくてもできることから始め、それが継続できれば、取り組みのレベル自体を上げることができます。大切なのは継続です!

Profile 清水 忍さん

清水忍さんプロフィール画像

パーソナルトレーニングジム「INSTRUCTIONS」代表。パーソナルトレーナーとしてプロ野球選手や力士などのトレーニング指導を行う一方、健康保険組合での研修や企業での健康プログラム作成、各専門学校での講義など、主に教育研修を軸として活動。雑誌「Tarzan」やテレビなどの出演も多数。

基礎体力特集 バナー画像

取材・文/望月琴海 ※プロフィール以外の画像はイメージです。