体が不自由になっても、外でお酒やカラオケを楽しみたい−。そんな高齢者や障害者らの願いをかなえる飲食店が今春、伊勢市のしんみち商店街内にオープンした。店内のバリアフリー化を実現し、介護施設での勤務経験があるスタッフらが接客。代表の寺本達(さとし)さん(35)は「障害があってもなくても、気兼ねなく足を運べる店になれば」と望む。 (清水大輔)

 JR伊勢市駅側の商店街の入り口近くで3月にオープンした「きっさ&きっしゅ HADASHI」。昼(午前9時〜午後5時)は喫茶店として営業。唐揚げやハンバーグの定食、ホットサンド、ソフトドリンクを提供する。「昼カラオケ」も楽しめる。夜(午後8時以降)は、お酒を楽しめるバーに。介護福祉士の寺本さんや、看護師の資格のあるスタッフらがおもてなしする。

 2階建ての建物では、随所に高齢者らへの配慮が見られる。店の入り口にはインターホンがあり、支援が必要であればスタッフが席まで付き添う。店内はスロープで楽に移動でき、車いすのまま入れる広々としたトイレも用意。カウンターは車いすのまま使える高さにした。料理を食べやすい大きさに切ったり、食器を持ちやすくする「自助具」を貸し出したりするサービスもある。

 寺本さんは2020年から、訪問介護事業を手がける一般社団法人「はだし」(鳥羽市)を経営する。飲食店を開いたのは、介護を受ける高齢者らが「飲み屋に行きづらい」「体が不自由でもカラオケをしたい」などと嘆くのを耳にしたのが契機だった。「家族や店に迷惑をかけたくない」と、外食を控える人もいるという。

 高齢者や車いす利用者らが訪れてリピーターになるなど、徐々に地域に浸透してきている。寺本さんは、「障害のために、引きこもりがちになってしまう人もいる。他のお客さんやスタッフとのコミュニケーションを楽しんでほしい。日頃の気晴らしができる空間になれば」と話している。

 昼は土、日曜日が定休で、夜は水曜定休。(問)同店=090(6614)0101