豊川市中心部を流れる佐奈川の桜並木の老木化が顕著になっている。毎年春には堤防の菜の花とともに咲き、多くの人が訪れる花見の名所として親しまれてきたが、倒木の危険性から伐採が進み、近年は数を減らしている。将来ここで花見を楽しめなくなるのだろうか。 (島将之)

 この春も花を咲かせた桜の木は、いま青々とした葉が茂っている。市の委託で2023年度から桜並木を診断している市内の造園会社勤務の樹木医、岩見研司さん(45)と川沿いを歩くと、あらためて老木化が進んでいると実感する。

 「この木はだいぶ腐朽が進んでいますね」。岩見さんが、幹の内部が露出した老木を指し示した。指で触れると、土のようにぼろぼろと崩れ落ちた。ただちに通行人に危険が及ぶほどではないが、いずれ伐採が必要だと指摘する。

 ほかにも枯れて枝に葉が付いていなかったり、腐りだして幹や根元に菌類が生えたりした木が何本も見られた。

 市道路河川管理課によると、桜並木は終戦後の1951年ごろに800本ほどが植樹された。誰が植えたかは記録がないという。同市本野ケ原から蔵子地区までの5・5キロ。70年以上が経過し、近年は樹勢の衰えによる倒木や枝折れが目立つ。市は2019〜22年度に54本を伐採し、現在は628本になった。

 残っている木も、健全なのは半分程度にとどまる。簡易診断の結果では22年度末で良好な「A判定」は332本、一部に枯れや亀裂などの欠陥がある「B」は172本、伐採や剪定(せんてい)の検討が必要な「C」は148本だった。

 右岸側の散策路では一部で倒木なども発生したため市は23年度から詳しい診断を樹木医に委託。岩見さんが診断を終えた92本のうち、伐採と剪定が必要な木はそれぞれ24本ずつ確認された。23年6月の記録的豪雨でも地盤の緩みが原因で1本が倒れた。

 本年度は200本近くを診断し、今後も必要な伐採を進める方針。一方、新たに植樹したり、植え替えたりすることは治水上の理由で難しいという。

 堤防に植えられた桜は、河川法が改正された1997年以降、木の根が腐朽して堤防の決壊につながる恐れがあるとして、河川区域で植樹できなくなったためだ。市は、県が計画する佐奈川の河川改修にあわせ、堤防面から外れた近接地で植樹が可能かどうか検討する。

 岩見さんによると、ソメイヨシノの寿命は一般的に60〜70年とされるが、適切に管理すれば、100年以上はもつという。切り株やその周辺から出た芽を生かすことで、植え替えずに新たな木を育てることも可能だという。「安全を最優先しながら、残った木を少しでも生き永らえるようにしたい」と見すえている。