街並み「着物での散策似合う」 能登半島地震で被災した石川県七尾市の呉服店「和日遊日(わびあそび)はるなお」が8月3日、高岡市小馬出町(こんまだしまち)の複合商業施設「山町ヴァレー」に支店を出す。七尾はいまだ復興途上で客足も戻らないため、新天地で再起を期す。春木直樹社長(53)は「能登からもお客さんが来てもらえれば」と語り、七尾が復興した後は「高岡から能登を訪れるきっかけにもなれば」と期待する。 (松村裕子)

 七尾市桧物町(ひものまち)の自宅は地震で傾き中規模半壊、蔵も壁が落ちた。そばにある店は2007年の能登半島地震後に補強したため持ちこたえ、水道復旧後の3月中旬に再開したが、客の多くも被災しており、着物はなかなか売れない。

 高岡市には地震前から買い物で訪れており、能越自動車道を使えば七尾市からも通勤圏内。大型商家を改装した山町ヴァレーのある山町筋は土蔵造りの建物が並ぶ国重要伝統的建造物群保存地区で、「着物姿での散策が似合う」として出店を決めた。新幹線駅もあり、外国人を含む観光客の需要も見込める。

 高岡市の既存呉服店はフォーマル中心で、若者向けカジュアルに方針転換した自店とは競合しない。個性的な店を営む若手経営者がいて、工芸などものづくりも盛ん。若女将(おかみ)の妻未央子さん(47)は「違う何かを生み出せる予感がする」と期待する。

 五ノ蔵を借りて改装し、山町筋のイベントにあわせてオープンする。8月4、5日には地震で解体する知人の蔵から出てきた昭和初期の婚礼衣装を展示する。

 木−日曜日に営業し、七尾で開いていた立礼式の茶会や着付け教室、ランチ会も行う。高岡の支店は七尾が復興しても続けるつもりだ。